「無観客競馬」に突入してからめぐって来た5度目の週末。
先週末にはドバイWCデー中止、という衝撃的なニュースが飛び込んできたし、欧州、米国では開催自体不可能、という状況になって、今や世界広しといえども、まともに競馬を開催できているのは香港と豪州とこの日本だけ。
そして、決してもう安全ではない、”外出すら自粛”という状況になってきたにもかかわらず、ラジオでも、グリーンチャンネルでも、それまでと何ら変わらない音声と映像が流れてくる、というところに、現実から乖離したような何かを感じてしまうのは自分だけだろうか。
とはいえ、クラシックシーズンに向けて盛り上がる大事な時期にきちんと開催が消化されていくのは、ファンにとっても関係者にとってもありがたい話なのは間違いなく、そして、今週からは遂にGⅠも始まって、よりささやかな楽しみは増えた。
もちろん、こういう「非常時下」の状況だけに、”いつもと違う”ことは当然起きる。
まず先週からの流れでいうと、ドバイでの騎乗のために一足早く現地に飛んでしまっていたC・ルメール騎手と古川吉洋騎手が「2週間関係施設入構禁止」の要請により、今週と来週の開催日に騎乗できない、という悲惨な事態に・・・。
逆に、ギリギリまで出発を引っ張っていた、川田騎手、武豊騎手、M・デムーロ騎手と、一足先にキャンセルしていた福永騎手は、「乗れなかったはずの馬」に乗ることが叶い、見事なまでに明暗が分かれた。
さすがに大きなレースを除けば、先に決まっていた騎手の顔を立てたのか、いずれの騎手も騎乗機会は決して多くなかったのだが、そんな中川田騎手が土曜日の3鞍で2勝2着1回、武豊騎手も3勝を上積みした上に、土曜日の毎日杯を無敗の素質馬・サトノインプレッサで制する、という勝負強さを見せつけたのはさすが、というほかない*1。
また、「椿事」といえば、「この時期にか!」と思わせる中山競馬場の「雪」。
今年は暖冬で、ここ数年、どこかしらかは当たっていた「降雪中止」がないままここまで来ていて、自分の頭の中にも「感染拡大」以外の中止想定事由は存在していなかったのだが、よりによって春の入り口でこうなるとは・・・。
主力騎手が軒並み中京に集結している中で、勝ち鞍上積みを狙っていた関東の若手騎手たちには気の毒だが、あらゆるイベントが中止になっている今、数少ない”安全な娯楽”を楽しむ機会が一日でも増えた(31日に振替開催)、ということに今は感謝すべきなのかもしれない。
で、今週の「椿事」の極めつけと言えば、春のGⅠ第1弾・高松宮記念である。
いくら”ヴァーチャル開催”とはいえ、入場ファンファーレが下級条件戦並みの録音演奏、というのはちょっと寂しかったし、昨年覇者のミスターメロディが、ドバイに行って不在(そしてドバイでも・・・)というのは残念だったのだが、メンバー的にはマイル路線からステルヴィオ、グランアレグリア、モズアスコット、ノームコアといった多士済々のGⅠホルダーが参戦して異種格闘技戦の様相となり、人気も派手に割れた。
個人的には直前で騎手が二転三転した馬たち*2や、別路線から来た馬たちよりも、ここ目標にコンビを組んだ騎手で参戦してきた馬がこういう時は強いだろう、と思って、ダイアトニックから狙う、という作戦だったから、スタートがきれいに決まり、最後の直線も絶好のポジションから勢いよく追ってきたときは「よっしゃ!」と思ったのだが、ゴール前で進路を失って最後は外から差されあえなく4着。
1着入線したのは、忘れた頃に走る(しかも本職はマイル路線)15番人気の穴馬・クリノガウディ―、しかも鞍上は乗るはずだった馬の手綱を失った和田竜二騎手だったから、これですんなり決まっていれば、劇的なドラマになるはずだったのだが・・・
*1:それでも、「残留組」の松山騎手が6勝を挙げるなど、「穴」を埋める予定だった騎手たちの活躍が目立った週でもあったのだが・・・。
*2:ダノンスマッシュ(三浦騎手→川田騎手)、アイラブテーラー(和田騎手→武豊騎手)、タワーオブロンドン(ヒューイットソン騎手→福永騎手)