企業法務

蘇った記憶。

時間が過ぎていくうちに、何となくおぼろげになっていた記憶が一つのリリースで蘇った。鹿島建設株式会社が出した「独占禁止法違反事件における判決(控訴審)について」というリリース。www.nikkei.comもちろん、東京高裁で判決が出た、というニュースは電…

「震える手」で動かした先にあるもの

今朝の日経紙朝刊、「陸奥宗光」から始まる、ともすれば見逃してしまうくらい地味だがズシリと刺さったコラムがあった。書き手は斉藤徹弥上級論説委員。 「土地は公のもの」震える手で という見出しの記事である*1。何といってもインパクトがあったのは、中…

知財高裁に救われたルブタン

判決自体は昨年末に出ていたようだが、地裁判決の時とは違って判決時点での報道はほとんどなく、しかも、最高裁のウェブサイトにアップされるのが遅れたためか、今週くらいになってようやく話題になった「ルブタンのレッドソール」の不正競争行為差止請求事…

突きつけられたリミットと未だ消えぬ疑問

JPXが昨夏から始めた「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」。第1回の頃から既に不穏な空気が漂っていたのだが*1、その流れは遂に変わらないまま、残酷な結論が示された。 「東京証券取引所は25日、プライム市場などの上場基準に満たなくても暫定的…

いつまで続くかこのブーム。

昨年暮れくらいからの傾向が、年が変わってもまだ続いている。日経紙の紙面を開けば、「賃上げ」。そして「リスキリング」。有名な企業がバスに乗り遅れるな、とばかりに「全社員向けにDX教育を実施」という、冷静に考えればただの内輪の話を外向けにぶち上…

混沌の先にあるもの。

またいつものように新しい年がやってきた。さすがに50回近く、世に出てからも四半世紀にわたって同じイベントを繰り返していると感慨も薄れて様々なものがルーティン化してくるのだが、そうはいっても多少は気持ちをリセットして今年の展望を・・・と、日経…

遂に歴史は動いた、のか?

年末の”いじりネタ”として定着して久しい日経新聞の「企業法務税務・弁護士調査」。昨年は企画の名称が変わって仕切り直し、となったものの、中村直人弁護士が「企業が選ぶ弁護士ランキング」の首位、という予定調和的結末に変わりはなく、長年の一ファンと…

今年の「知財判例」と言えば・・・。

年を重ねるたびに、過ぎる時間は早くなる。幸運にも、ちょうど「この一年を振り返る」的な企画*1に参加する機会をいただいたので、ここしばらくの間は、手の空いた時間でいろいろ思い出そうとしていたのだが、「つい最近」と思っていたことが1,2年前の話だ…

ようやく、の終焉。

よりによってこの年末に・・・と誰もが思った、少し早めのクリスマスプレゼントというにはあまりに唐突な政策転換だった。 「日銀は19~20日の金融政策決定会合で大規模緩和を修正する方針を決めた。長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広…

何度見てもぬぐえない「被害者救済新法」というフレーズへの違和感

本来なら政権与党が盤石の基盤に支えられて悠々と乗り切れるはずだったのに、身内の様々な問題が噴出した結果、会期末ギリギリまで対応を余儀なくされた今年の臨時国会。最後まで「政治」に振り回された結果、最大の目玉法案の参院本会議での採決がまさかの…

一瞬仰天したけれど・・・。

まだメディアにも「ドイツ戦勝利」の余韻が残っていた24日の日経夕刊の1面に↓のような記事が躍ってひっくり返りそうになったのは、決して自分だけではなかったはずだ。 「金融庁は証券取引所が3カ月ごとに上場企業に提出を求める「四半期決算短信」について…

これが本当なら何を信じればよいのだろうか。

数か月前に、この会社が絡んだインサイダー取引の嫌疑が報じられた時もどうなんだ、と思ったが、今回はさらにその上を行く衝撃、である。アイ・アールジャパンHDのリリースより。www.nikkei.com 「当社は、2021年9月上旬に東京機械製作所様との間で、アジア…

34年越しの残滓が消えた日。

それは思いがけないサプライズだった。 「音楽教室のレッスンでの楽曲演奏が、日本音楽著作権協会(JASRAC)による著作権使用料の徴収対象になるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は24日、JASRAC側の上告を棄却した。教師…

何のための、誰のための政策か。

夏の参院選で盤石の地位を固めたか、と思いきや好事魔多し。ここに来て、様々な角度から現首相への批判が噴き出している。それでも政策に関して言えば、長きにわたる安倍・菅時代と比べれば遥かにマシ*1というのが自分の率直な印象だったりもするのだが、こ…

時価総額だけが「価値」じゃない。

新型コロナ禍はようやく終息に向かいつつあるものの、欧州の戦火は止まず、この2年の間の「経済対策」とサプライチェーンの歪みが世界的なインフレを招き・・・と、依然として落ち着かないのが各国の金融、株式市場。そして、まさにその犠牲、とも言えるよう…

目指していた到達点はここなのか?

次から次へと著名企業を巻き込んで出てくる”五輪スポンサー疑獄”に世の中が騒然としている中で、9月も最終日になって突如出てきた「寿司チェーン営業秘密不正使用」事件。そしてあれよあれよという間に、東証プライム上場企業、カッパ・クリエイト株式会社の…

情報提供サイト上での商標使用をめぐる”紙一重”の判断。

諸般の事情で、今年に入ってから商標法26条1項各号周りの判例、文献を調べる機会がやたら多くなっているのだが、最近アップされた裁判例の中にも、商標法26条1項6号をめぐって興味深い判断が示されている事例を見つけたので、備忘代わりに挙げておくことにす…

常識は簡単に覆る。

日本では短い一週間、なれど、世界的には金融市場が大きくうねっていた中で、一日に二度も”あり得ない”ことが起きた。一つ目は、この世界的な利上げラッシュの中で、わが国の中央銀行が下した「大規模緩和維持」の判断。これまでの黒田総裁の強気すぎる振る…

一つの「決断」の重み。

何も世の中で多くの人々が一息ついている三連休の中日に、こんな記事載せなくてもよいのに・・・と思ったのが、日経紙朝刊1面の↓の記事。 「中部電力やオリックスなど複数の日本企業が東芝に出資する検討を始めたことが17日、わかった。東芝は株式非公開化を…

「銀行振込」は絶対的な選択肢なのか?

よほどの”記事日照り”だったのか、なぜか昨日、日曜日の朝刊の1面に載ったこの記事。 「政府は給与をデジタルマネーで受け取る制度を2023年4月にも解禁する方向で最終調整する。労働者側は決済アプリの口座に直接給与が入り、日常の買い物に使える。世界に遅…

拡張される「保護」と、そのエンフォースメントに向けられる疑義。

週明け早々、我らが日経紙の1面に躍る記事を見て、ひっくり返りそうになったのは自分だけだろうか。昨今のトレンド、「フリーランスの保護」もここに極まれり、といった感じのニュースである。 「政府は組織に属さずフリーランスとして働く人を下請法(略)…

誓いは時を超えて。

夏も終わりを迎えつつある2022年8月末、一つの仕事を終えての感想を言葉にするなら、「感無量」というのはこういう時のことを言うんだな、ということになるだろうか。ここ1,2年、講演や研修の機会もそれなりにあったが、対面で実施できたのは「社内限定」と…

「TOKYO2020」の傷跡。

先月くらいからくすぶっていた”疑惑”は、今週、関係者逮捕という事態を経て連日報じられる「事件」となった。東京五輪組織委員会元理事に対する金銭の授受。今のところ、受託収賄の嫌疑をかけられている元理事側はもちろんのこと、贈賄側も賄賂性の認識につ…

「正論」が常に正しいとは限らない。

すったもんだの末に、東証の市場再編が実行されたのは今春のこと。それから四半期が一つ過ぎ、「プライム」とか「グロース」といった呼び名も何となく馴染んできた気もする中で、JPX主催の「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の第1回が先月末に…

約款規定を超えた対応の功罪。

今月初めに起きたKDDIの大規模通信障害。所管官庁の猛烈なプレッシャーもあってのことか、原因究明のための調査は急ピッチで行われ、月も変わらないうちに”総括”ともいうべきリリースが出された。 「KDDIは29日、2日に起きた通信障害で携帯電話などが利用し…

住宅地図の著作権侵害をめぐる地裁判決より。

事柄としては5月に遡る話だが、先月に判決が公表され、それをしばらく経ってから読んでみたらいろいろと示唆に富む争点も潜んでいた、ということで、住宅地図の著作権侵害をめぐる事件の判決を取り上げてみる。www.zenrin.co.jp リリース全文はhttps://www.z…

「責任追及」より先に考えるべきこと

先の週末から、何日にもわたって続いていたKDDIの通信障害がようやく「全面復旧」した、と報じられたのは昨日の夕方のことだった。 「KDDIは5日、2日未明に起きた大規模な通信障害が全面的に復旧したと発表した。4日午後にデータ通信と音声通話の利用は「ほ…

振り返れば転換点、なのかもしれない「株主総会2022」

今年は、シーズンがひと段落するギリギリまでかかわっていたこともあって、”振り返り”もなかなかできないまま過ぎていった「6月総会」のシーズン。全体的な傾向としては、すでに以下のエントリーでもまとめた通りで、株主提案を受けた会社がとにかく多かった…

いつかブーメランにならないように。

世界の潮流に乗り遅れるな、とばかりに、最近では紙面を開けば「巨大IT」バッシング施策がどこかに載っている、というような状況になりつつあるのだが、これもその一つ。 「日本で事業を展開する海外IT(情報技術)大手が法人登記をしていない問題で、政府は…

「アルゴリズム」東京地裁判決は令和2年3月報告書をも越えたのか?

6月16日の夕方に飛び込んできた一報は、様々なところへと波紋を広げている。 「グルメサイト「食べログ」で評価点が不当に下がり、売り上げが減少したとして、飲食チェーン店がサイト運営のカカクコムに約6億4000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が16日…

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