知財

リツイート最高裁判決への違和感が端的に言語化された評釈に接して~法律時報2020年10月号「判例時評」コーナーより。

月末ということで届いた法律雑誌のうち、法律時報の最新号(2020年10月号、Vol.92. No.11)に目を通していたら、思わぬところに切れ味鋭い評釈が掲載されていることに気づいた。元々この号は、今、まさに研究会での議論が進められている動産・債権譲渡担保法…

防護標章登録に知財高裁が突き付けた新たなハードル?

商標の世界で知る人ぞ知る、ともいうべき存在になっているのが「防護標章」という代物である。自分がこの存在を知ったのはもう20年くらい前のことになるが、未だにわかったようでわからない、そんなモヤモヤしたところが残る制度だったりもする。商標法の条…

認知率95.9%でも登録が認められない悲しさ再び~色彩商標をめぐる判決・第3弾を受けて

「3度目の正直」などというものを期待していたわけでは決してなかったのだが、色彩商標の登録拒絶に対する審決取消訴訟・第3弾を見て、絶望の闇はより深まった気がする。過去2回の審決取消訴訟の判決内容については、以下のエントリーを参照いただければ、と…

「知財は聖域ではない」ということを再び知らしめた最高裁。

日曜日に「特許法の八衢」*1というブログで紹介されているのを見て、結末が気になっていた事件があった。patent-law.hatenablog.comライセンス契約をめぐる比較的シンプルな中身の紛争のように思える割には、本件のみならず、米国でも大阪でも事件が裁判所に…

顕在化した「社内弁護士」のリスク~利益相反問題に関する高裁決定への疑問

特許権侵害訴訟に絡んで示された判断、とはいえ、これを「知財事件」というカテゴリーだけで括ってしまうのは狭すぎる、そんな極めてセンシティブな問題を孕む決定が、今年の8月上旬に、知財高裁から出されている。全ての弁護士にとっての最重要規範である「…

まだまだ続く「令和2年著作権法祭り」~ジュリスト2020年9月号の特集より

先日、「論究ジュリスト」の「著作権法50年」の企画で知財業界を大いに盛り上げてくれた有斐閣だが、ジュリスト本誌でも8月末発売の2020年9月号で「著作権法改正」特集を組んできた。ジュリスト 2020年 09 月号発売日: 2020/08/25メディア: 雑誌このお題に関…

著作権法50年、歴史の重み。

今年もめぐって来た終戦記念日。自分はもちろん「戦後世代」ではあるのだが、物心ついた時はまだ「戦後40年」になるかならないかだったから、「終戦75年」というフレーズが繰り返し出てくるのを聞くと、何とも言えない気持ちになる。成人した頃は、「戦争を…

「OneNDA」が示す一つの可能性と、それでもなお、してみたい突っ込み。

ちょっと前から話題になっていた、単純な割に手間がかかる「NDA」(秘密保持契約)という厄介な代物を何とかして統一できないか? という構想が、遂に具体的な形として姿を現したようである。題して「One NDA」。one-contract.com自分の一番の関心は、共通す…

こんな時だからこそ絶対に読んでおきたい一冊。

本来ならオリンピック開幕ウィークだった、ということくらいは知っていたものの、昨日今日が何の祝日なのかよくよく確かめもしないまま長期連休に突入し、日本中で花火が打ちあがる、というニュースに接して、ようやく 「そうか、本当なら今日が開会式になる…

ニュースと判決文を眺めただけでは分からない「リツイート最判」の本当の意義。

今年の春以降、全体的に裁判所の動きが悪くなっている中で、知財業界にインパクトを与えるような判決もあまり出てこない状況が続いていたのだが、ここにきて強烈なインパクトのある判決が出た。しかも最高裁から・・・。 「ツイッターでリツイート(転載)さ…

司法判断第2弾、それでも残るモヤモヤ。

裁判所が長らく閉まっていたこともあって、最近は新着の判決に目を通す機会も減っていたのだが、ここにきて徐々にアップされる数も増えてきている。ずっと追いかけている「色彩のみからなる商標」も、今年3月の第1弾判決*1に続き、今度は高部眞規子裁判長の…

「スタートアップ」に生き残るための武器は配られたのか?

先月末、日経紙に載った記事を見て思わずフライング気味に書いてしまったエントリーがある。k-houmu-sensi2005.hatenablog.comその時は、何だか腑に落ちない記事だなぁ・・・と思いながら読んでいたのだが、その直後に、公取委、経産省がそれぞれ”元ネタ”と…

最近の法律雑誌より~法律時報2020年7月号

なかなかゆっくりと情報をインプットする余裕もない今日この頃だが、先月末発売のこの雑誌のこの号に関しては、やはり書かないわけにはいかない、ということで、先週のジュリストに続いてエントリーを上げることにした。法律時報2020年7月号 通巻 1153号 平…

最近の法律雑誌より~ジュリスト2020年7月号

このブログでも長らく連日連夜「緊急特番」みたいな状況が続いていたのだけど、さすがにそろそろじっくりと法律雑誌を読めるような日常に近づけていきたいな、ということで、久々にこのざっくりとした標題を付けてみたり。ジュリスト 2020年 07 月号 [雑誌]…

掛け違えられたボタンの「直し方」への素朴な疑問。

土曜日の夜、日経の電子版に載った記事を見て、思わず「ん?」と首をひねりたくなってしまった。見出しからして、「知財活用で「新興いじめ」 大企業、無償要求や情報流出」だから、全く穏やかではない。そして記事の本文に踏み込むと、書き出しからして、 …

火蓋は切られてしまったが・・・。

昨年の夏くらいに少し話題になったのを最後に、しばらくは「訴訟になった」というニュースも出ていなかったので、落ち着いてくれたかな・・・とひそかに期待していたのだが、残念ながら事態は行きつくところまでいってしまったようだ。 「2018年にノーベル生…

「ダウンロード違法化」のひとまずの終着点

3年越しで議論されてきた「違法ダウンロード規制拡大」をめぐる動きが、改正著作権法成立という形で、ようやく一つの区切りを迎えた。 「漫画などの海賊版対策を強化する改正著作権法は5日、参院本会議で成立した。インターネット上に無断で公開された全著作…

特許よりも先に考えるべきこと。

流行が早い時期から始まった国ではようやく収束に向かいつつあるとはいえ、全世界的な鎮圧にはまだまだ程遠い新型コロナウイルス。そして、様々な名前の薬が浮かんでは、まだまだ・・・という評価が飛び交い、依然として決定打となるものが出てきていないの…

本当に残念な報を受けて。

月が変わり、先週まで「在宅」モードだった会社でも原則と例外が切り替わるところが結構ある、と聞いていたので、今朝は戦々恐々としながら街に出た。確かに、いろんなところで「先週よりは人多いな」と感じるところはあったのだけど、お昼、夕方、と時が過…

10年以上の時を超えて蘇った「社保庁の憂鬱」~新聞記事イントラネット無断掲載事件をめぐって

今どきそんなことをやっている会社はない、と言われてしまいそうだが、かつて、入社して間もない社員の朝一の仕事が「新聞の切り抜き」だった時代があった。かくいう自分も、初めて現場からデスクワークの職場に移り、「総務の何でも雑用係」だった頃は、朝7…

装い新たに一段とパワーアップした『プラクティス知的財産法』シリーズ。

目下、暦の上では「ゴールデンウィーク」。普段あまりカレンダーとは関係ない生活を送っている者にとっても、多少仕事のレスポンスが遅れても文句は言われない(はず)の、自分のためだけに時間を使える週間ゆえ、本来であれば、構想から一年以上温めてしま…

前向きな話に水を差すつもりはないのだけれど ~改正著作権法35条の施行を受けて。

平成30年著作権法改正で導入され、「授業目的公衆送信補償金制度」と題された改正著作権法35条の規定が、当初の予定より早く、昨日、2020年4月28日に施行された。 www.bunka.go.jpこのニュース自体は、コロナウイルス感染拡大の影響が深刻になり始めた先月か…

遂に出た「司法判断」~色彩商標制度創設から5年、初めての審決取消訴訟判決に接して

平成27年4月1日、商標法の世界に鳴り物入りで導入された「新しいタイプの商標」制度。特に色彩商標に関しては、「欧米に追い付く画期的な新制度」ということで、当時の特許庁の鼻息も随分荒かった*1。しかし、蓋を開けてみれば、想定を超える出願数に追いつ…

こんな時だからこそ目を向けたい今年の知財法の動き&マリカー知財高裁終局判決への雑感を少々。

年明け以降、なかなか知財関係の話題をフォローする余裕もなかったのだが、ここに来てようやく、『年報知的財産法』の最新号に目を通すことができた。年報知的財産法2019-2020発売日: 2019/12/18メディア: 単行本「知財年報」時代から通算して15冊目となるこ…

これが法解釈の限界なのか?~音楽教室 vs JASRAC 東京地裁判決に接して

2017年に紛争が表面化し、以来、足掛け2年以上にわたって争われてきた「音楽教室に対する著作権使用料請求が認められるかどうか?」という問題。当事者間の協議が平行線をたどったまま、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)側が、「音楽教室における演…

これで遂に決着・・・なのか? ~ダウンロード違法化問題をめぐって

3年越しで議論が続いている著作権侵害コンテンツのダウンロード違法化問題は、既に舞台が審議会から「政治」の場に移っているのだが、そんな中、自民党内でまた一つ動きがあったようである。 「自民党の知的財産戦略調査会(林芳正会長)は3日、萩生田光一文…

「違法ダウンロード」規制拡大議論の終着点?

昨年からずっとモヤモヤした状態が続いていた「侵害コンテンツのダウンロード違法化」をめぐる問題だが、ちょっと目を離している隙に、どうやら検討会の報告書がまとまったようである*1。 「文化庁は16日、漫画などを海賊版と知りながらダウンロードする行為…

我々はこの山をどこまで登ることができるのだろう?~田村善之『知財の理論』との格闘の途中にて。

昨年の秋頃に公刊予定であることが発表されるや否や、SNS上でも「発売まで待てない!」*1的な声が沸き上がったのが、田村善之教授の論文集、『知財の理論』である。知財の理論作者:田村 善之出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2019/12/21メディア: 単行本自分…

どうせなら「枝葉」ではない議論を。

著作権法に限った話ではないかもしれないが*1、重要な法改正の話は得てして「夕刊」に載る。ということで、今日も昨年から続いている「ダウンロード違法化」絡みの記事が日経紙夕刊の社会面に掲載された。 「文化庁は27日、漫画などを海賊版と知りながらダウ…

「訴訟」は最善の解決策ではない。

知財、それも特許庁所管分野の領域の政策決定に関して、”異常事態”が起きている、という話を耳にしたのは、かなり前のこと。当時、自分が受けた印象は、一部の急進的な与党議員と政治色の強い所管官庁のトップが暴走している、というものだったし、嵐のピー…

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