連載企画(1)

最高裁判例アーカイブ(H21.4.18〜H21.4.30)

4月は後半に入っても、注目を集める判決が多かったように思う。 細かい検討はさておくとして、とりあえず簡単にご紹介することとしたい。 最一小判平成21年4月23日(H20(オ)1298)、所有権移転登記手続等請求事件*1 本件に関して最高裁が判断を下したのは…

最高裁判例アーカイブ(H21.4.1〜H21.4.17)

あくまで自分の心覚え、用ではあるが、簡単にまとめてみた。 最二小判平成21年4月17日*1・住民票不記載処分取消等請求事件*2 「嫡出子又は嫡出でない子」の記載欄を空欄にし、かつ届出義務者ではない子の父を届出人として提出された出席届が不受理となった後…

最高裁法廷意見の分析(第23回)〜「免訴」の意味

メディア等でも高い注目を集めていた横浜事件再審をめぐる上告審判決。 結論としては上告棄却となっているが、判決においては、刑事訴訟における再審の意義、及び「免訴」の意義について、最高裁の考え方の一端が示されており、参考になる面が大きいと思われ…

最高裁法廷意見の分析(第22回)〜少年達の葛藤

ここ数年、最高裁で不法行為の成否をめぐる判決が積極的に出されるようになっている。 憲法論が争点になる場合と違って、大抵は法令違反を主張する上告受理申立事案だし、判断プロセスとしても事実関係の再レビューが中心になるから、あえて判決まで書かずに…

最高裁法廷意見の分析(第21回)〜わいせつと芸術の間

「メイプルソープ」写真集の輸入禁制品(「風俗を害すべき書籍、図画」)該当性をめぐる最高裁判決が、随所で好意的に取り上げられている。 これまでの判例に照らしてみれば、「処分取消請求を認めた」という本判決の結論が画期的なものであることに疑いの余…

最高裁法廷意見の分析(第20回)〜公務員制度と武士の情け

以前、「「公務員」の重さと27年の重み」というタイトルで触れていた最高裁判例だが*1、その後HPにアップされることになった。 最一小判平成19年12月13日(H18(行ツ)171号)*2。 多数意見は概ね先のエントリーで紹介したとおりであるが、改めて紹介すると…

最高裁法廷意見の分析(第19回)〜田原睦夫裁判官大活躍の巻

最高裁の法廷意見と言えば、一時、第一小法廷の泉徳治裁判官の独壇場のようになっていた時期もあったが、最近では第三小法廷の田原睦夫裁判官(弁護士出身)も存在感を発揮するようになってきている。 破産法・取引法の世界で有名な先生だっただけに、特に民…

最高裁法廷意見の分析(第18回)〜平穏vs自由・暴走族追放条例をめぐるたたかい

少しでも法律をかじったことのある人なら、憲法の世界において「表現の自由」(その一態様としての集会の自由、集団行動の自由も含む)がいかに重要視されているか、こんなところであえて説明するまでもなく、容易に知っていることだろう。 そして、法学徒で…

最高裁法廷意見の分析(第17回)〜一票の格差論の新たな潮流

今回検討の俎上に載せるのは,最大判平成19年6月13日(H18(行ツ)第176号、H17衆議院選挙無効事件)*1である。 選挙のたびに起こされるこの種の訴訟だが、今回も結論としては上告棄却であり、結論を導く筋自体も、これまでの「公選法規定合憲論」から大きく…

最高裁法廷意見の分析(第16回)〜無意味(?)な上告

最高裁判決が出るような事件には、大概それなりの背景事情があって、それなりの上告理由もあるものなのだ。 だが、これから取り上げる事件に関して言えば、「え、そんなところで争うの?」と思わず言ってしまいたくなるのは否めない。 最三小判平成19年5月29…

最高裁法廷意見の分析(第15回)〜難癖の付いた契約

久しぶりのこの企画。 少し遡るが、コンビニエンス・ストアのフランチャイズ契約の解釈が争われた事案を見てみることにする。 最二小判平成19年6月11日(H17(受)957号)*1 ここで問題になっていたフランチャイズ・チェーンのシステムにおいては「荒利分配…

最高裁法廷意見の分析(第14回)〜代理出産をめぐる立法論

最二小決平成19年3月23日(H18(許)第47号)*1 メディアでも大きく報道された向井亜紀・高田延彦夫妻の代理出産をめぐる事件。 民訴法118条に基づいて、ネバダ州の裁判所で出された「出生証明書及びその他の記録に対する申立人らの氏名の記録についての取決…

最高裁法廷意見の分析(第13回)〜地域特殊性へのこだわり?

最一小判平成19年3月8日(H17(行ヒ)第354号・遺族厚生年金不支給処分取消請求事件*1 今回取り上げるのは、先日第一小法廷が下した破棄自判判決。裁判長裁判官は、ヒューマニズムあふれる判決で知られる泉徳治氏(裁判官出身)。 本件で個別意見を表明して…

藤田宙靖判事の至言〜「最高裁判決法廷意見の分析」(第12回)

今回取り上げるのは、いろいろと議論を呼びそうな「君が代伴奏拒否事件」。 ネット上でも賛否両論飛び交っているこの事件だが、一方の側の論者が主張するほど「不当な」判決でもなければ、もう一方の側の論者がいうほど「常識的な」判決でもない、というのが…

最高裁法廷意見の分析(第11回)〜変わるもの、変われないもの。

毎度お馴染み、選挙が一つ終わるたびに提訴され、大法廷での審理が繰り返される選挙無効請求事件。 小選挙区制が導入され、かつてに比べると一票の格差が縮減傾向にある衆議院はともかく、参議院に関しては一県最低2人の大原則ゆえ一向に格差が改善されない…

倫理と法の狭間で〜「最高裁判決法廷意見の分析」(第10回)

最一小判平成18年9月4日*1。 新聞報道等で話題となった、死後懐胎子の認知訴訟。 周知のとおり、最高裁は結論として原告(子)の認知請求を棄却した。 認定された事実によれば、 亡くなった父親は元々慢性骨髄性白血病の治療を受けており、 無精子症のリスク…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第9回)

最一小判平成18年6月23日*1。 小泉首相の靖国参拝をめぐる一連の訴訟で、 初めての最高裁判決として注目を集めた事件。 靖国問題をめぐる議論については、 以前にも言及した記憶があるが、 戦死者を“英霊”として祀り上げることの是非はともかく、 一般市民が…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第8回)

今回の話題の中心は、行政訴訟と泉徳治裁判長。 これまでにも取り上げたことがあるが、 泉裁判長の法廷意見には、 単なる法律解釈論に留まらない “事実論を踏まえた判断”としての色彩が色濃く出ており、 少数意見ながら、“先例重視志向”に凝り固まった実務屋…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第7回)

メディアでも報道された団体定期保険をめぐる事件。 従業員自身が被保険者になっていたことを知らなかったり、 従業員が死亡した場合でも、会社に保険金が支払われるのみで それが遺族に還元されることはほとんどなかった*1、 という団体保険の運用が問題視…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第6回)

しばらく間が空いたが、再びいくつか取り上げてみたいと思う。 最二小判平成18年3月17日*1。 原審が福岡高裁那覇支部、というローカルな事案が 最高裁という大舞台で注目を浴びることになったわけだが、 概要を簡単に説明すると、 「入会部落の慣習に基づく…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第5回)

最一小判平成17年12月8日(損害賠償請求事件)*1 延び延びになっていた連載企画。 予告してから実に2ヶ月以上経過してしまった・・・。 この事件の要旨は、 「拘置所に勾留中の者が脳こうそくを発症し重大な後遺症が残った場合について,速やかに外部の医療…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第4回)

連載企画、サボってはいるが継続中。 最三小判平成18年1月24日・不当利得返還請求事件*1。 本判決は、今年に入ってから相次いで出されていた、 貸金業法上の“グレーゾーン金利”をめぐる小法廷判決の最後を飾るもの、 と位置付けることができる*2。 第一小法…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第3回)

ちょっと予定を変更して、 「ロースクール道」というブログで数日前に紹介された (http://app.blog.livedoor.jp/you136/tb.cgi/50509122) 泉徳治裁判官による「継ぎはぎ判決への苦言」を取り上げてみる。 最一小判平成18年1月19日(建物収去土地明渡等請求…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第2回)

今回は行政法分野の判決2件。 もっとも、行政法プロパーの分野については完全に素人だし、 他のブログにもコメント等が載っている判決なので 軽く流す。 最大判平成17年12月7日(小田急線連続立体交差事業認可処分取消等請求事件) 新聞でも大きく取り上げら…

「最高裁判決法廷意見の分析」(第1回)

記念すべき第1回ではあるが、 あまり時間がないため、簡単なコメントのみにとどめることにしたい。 ジュリストに調査官解説が載っているような判決を あえて自分が取り上げることに意味はないので、 とりあえずは、直近の12月分から。 最二小判平成17年12月6…

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