「角瓶」のリベンジ?

日経新聞の「法務インサイド」で、先日のコカ・コーラの立体商標に関する知財高裁判決が紹介されている。(日本経済新聞2008年6月30日付朝刊・第16面)


田中昌利弁護士(元知財高裁判事)、川瀬幹夫弁理士のコメント等も交えつつ、知財高裁の判決が、

「企業努力を高く評価している」(川瀬幹夫弁理士のコメント)

ものであることを丁寧に説明しており、一般紙にしては非常にわかりやすい解説だといえるだろう。


で、自分が興味を抱いたのは、このコラムの最後に出てくる以下のくだりである。

「今回、コカ・コーラ瓶の判決を受けて「同じ容器で特徴のあるサントリーの角瓶はなぜ認められなかったのか」という疑問の声も出ている」

サントリーの「角瓶」と言えば、ヤクルトの乳酸菌飲料容器と並んで、

「これで立体商標登録できないんだったら、容器についてはもうあきらめるしかない・・・」

と、商標担当者を嘆かせる例として、これまで繰り返し使われることが多かったものであるが、記事によれば、

「販売開始は(国内では)コカ・コーラより20年長」く、販売本数も7億本に達している」

ということで、サントリーも再出願を検討している、とのコメント。


日本弁理士会広報センターの岩田敏弁理士までもが、

知財高裁の判決を見る限り、角瓶も認められる可能性はあるのではないか」

リップサービスしているのだから、サントリー側の鼻息が荒くなっても不思議ではない。


もっとも、いかに登録に際しての判断基準が変わったとしても、そして商標がその性質上、(特許等と違って)再出願することがが可能だとしても、果たして、サントリーがあえて再挑戦するために動き出すのか・・・と問われれば、引っかかるところもある。


なぜなら、別に商標権を確保しなくても、悪質な類似品を不競法で排除する余地はあるし、最近の一連の立体商標登録判断基準を見る限り、全く使用したことのない商標ブローカーが権利を押さえるのも極めて困難だろうから、商標をあらためて取りに行かなくても・・・という思いがどうしても出てきてしまうからである。


それでもサントリーはあえて「角瓶」を取りに行くのか?


ここは“ブランド”で勝負するサントリーのこと。
これからどういった戦略を見せるのか、こうご期待である。

2008年6月のまとめ

中旬から下旬にかけて、例の守秘義務問題関連のエントリーにアクセスが集中したこともあって、今月はブログ開設以来の数字になった(月間ページビュー4万回強、ユニークユーザー3万人強)。


他にも、知財がらみの小ネタが多かったし、最後の週末に飛び出した東京永和解散→TMIへ、というニュースの関心度も高いようだ。


正直、話題になったニュースは、あまり気持ちの良いものではなかったので、これで注目を集めてしまうのは正直心苦しいところもあるのだが、件のニュースしかり、フィレンチェの落書き問題しかり*1メディア・リテラシーの重要性を考える上で欠かせない素材だったのも確かだろうと思う。

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一年もこれで半分を回った。


これからの夏に向けてラストスパート。そんな気分である。

*1:案の定、“落書き”の実態が徐々に明らかになり、問題は混迷する様相を見せている。世界遺産への落書きは決して許される行為ではないが、落書きから特定の学校名が特定できたり、名前の挙がっている人間が名の知れた人物だったり、というただそれだけで、特定の対象をスケープゴートにする報道姿勢(&それを受けた世間の反応)を見ると、ある種のおぞましさを感じずにはいられない。

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