「ストリートビュー」ついに日経で。

サービス開始以来、様々な評価が乱れ飛んでいるグーグル社の「ストリートビュー」サービスの話題が、ついに、日経の法務面でも取り上げられた*1


記事の中では、肖像権、プライバシー侵害のおそれを指摘し、グーグル社のサービスに対して“手厳しい”評価を下している落合洋司弁護士と、

「新サービスに取り組む同社のチャレンジ精神を高く評価する」

というコメントを寄せている北大・町村泰貴教授(顔写真付き)の双方の意見が紹介されており、この問題を考える上では興味深い中身となっている*2


個人的には、このコラムの冒頭で提起されている問題のうち、

「自宅の窓まで世界中から見られているようで、気持ちが悪い」

という指摘については、どうでもいい話じゃないか、と思っているのだが*3

「顔をぼかしているが、知り合いなら誰か判別できる」

という状態を放置しているのは、どうなのかなあ、と思う*4

「ユーザーの利便性とリスクとを秤(はかり)にかけ挑戦する」

という精神は、全てのビジネスに共通する優れた思想であり、尊重に値するが、もし、自分の会社で同じようなサービスを始めたい、という希望が事業部門から上がってきたら、法務担当者としては、やっぱり、「ちょっと待て、せめて映っている人間は全部消去してくれ」くらいの指示は出さざるを得ない。


この国では、定点観測カメラの映像や通行人が映り込んだ街頭インタビューなどが、堂々とニュースやバラエティで使われているし、そういう類のものに自分が映っていたときに、「見て見て!あれ私〜!」とはしゃぐ人も決して少なくないのが現状だけに、やれ「プライバシー侵害」だの「肖像権侵害」だのと騒いだところで、ピンとくる人がどれほどいるかは正直疑問なのだが*5、同時に「権利意識」が高い人も少なからずいるのも事実。


今後、この問題がどのような展開を見せるのか(町田市議会のような反応が一般的な流れになるのか)、今の時点で予測することは困難だが、記事で掲載されているような

「許可を取ることよりも謝罪するほうが簡単だ」

というマインドが果たしてこの島国ニッポンで受け入れられるのか、と言えば疑問なしとはしない。


「画期的なサービス」として浸透していくのか、それとも「外資系企業の価値観の違い」の一例として嘲笑されることになるのか、これからが注目である。

*1:日本経済新聞2008年10月13日付朝刊・第14面。三宅伸吾編集委員担当。

*2:ちなみに、筆者が紹介するまでもないが、落合弁護士、町村教授とも、“はてな”の人気ブロガーとして良く知られている。

*3:元々自宅の外観は、誰でも容易に見ることができる状態になっているのだし、それ自体では「誰の家」だかは判別できない(個別の住所等、他の情報と組み合わせて初めて個々人の家を特定できるに過ぎない)のだから、この点に関してプライバシー権云々の話を持ち出すのは行きすぎというべきだろう。

*4:実際、実家の近所のおばちゃんが庭いじりしている姿はちゃんと映っていた。筆者は、「お元気なことを確認できて良かった」と思うだけなのだが、ご当人がそのことを知れば別の感想を抱くかもしれない。

*5:筆者自身は街角にテレビカメラが転がっていたら逃げるタイプの人間なのだが、それでも、仮に自分の姿がストリートビューに映っていたところで、そんなに不快感は抱かないだろうと思う。

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