年始恒例の「予測」に思う。

正月の日経新聞の目玉と言えば、やはりエコノミストや主要企業の経営者らによる、「今年の経済展望」のコーナー。


当然、去年からの流れを引き継いで予測を立てているだけに、ほとんどの識者が「実質成長率マイナス」で回答しているし、日経平均株価も「下値6,500円」から始まって、上値は「年末にようやく13,000円」といった程度の超弱気予想に留まっている。


時流に合わせるのも、こういう人たちにとっては大事な資質なのだろうから、そこを批判しても仕方ないのだが、読者に提供するコンテンツとしては、ちょっと物足りな過ぎるのではないだろうか。



ちなみに、筆者の手元には、昨年の1月3日付朝刊に掲載された「経営者・有識者に聞く/2008年私の見方」があるので、意地悪く紹介すると、

「主要企業の経営者やエコノミスト20人に景気の見通しを聞いたところ、2008年度の実質国内総生産GDP)伸び率は平均で1.98%となり、政府の見通し(2.0%)とほぼ同じ水準になった。」
日本経済新聞2008年1月3日付朝刊・第18面)

「主要企業の経営者に今年の国内株式相場の見通しを尋ねたところ、春先まで調整含みで推移する一方、年後半には持ち直し11-12月に高値を付けるとの回答が大勢を占めた。」
日本経済新聞2008年1月3日付朝刊・第19面)

となっている(笑)。


為替相場については、「1ドル=100円を突破するかもしれない」という鋭い見方が示されていたりもするのだが*1、株価の予想はまぁひどいものだ(苦笑)。


下値はどんなに低い予想でも日経平均14,000円程度、高値に至っては、大和証券グループ本社社長の21,000円を筆頭に、18,000円、19,000円といった景気の良い数字が並ぶ。


これが競馬の予想紙だったら、赤鉛筆オヤジの罵声とともにゴミ箱に投げつけられても不思議ではないような「予測」である。



昨年我が国を襲った米国発の“大不況”を“これまでの経済常識を凌駕する重大なもの”と評するのであれば、これだけの“予測のズレ”も免責されるのかもしれないが、

「信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に揺れる米国経済」

が日本経済にとって最大のリスク要因になるかもしれない、ということは2008年1月の時点でも既に情報として織り込まれているのだから、余興半分で回答している経営者の方々ならまだしも、「エコノミスト」として食べているプロの方々が「全く想像できませんでした」というのでは本来困るのではないかと・・・



なお、もっと意地悪く、「経営者が選ぶ有望銘柄ランキング(2008年)」の上位銘柄の昨年の値動きを紹介しておくと、

始値終値
1 コマツ 2950-1118
2 トヨタ自動車 5880-2905
3 三菱商事 3010-1238
4 信越化学工業 6620-4070
5 東レ 863-452
6 シャープ 2000-636
7 スズキ 3240-1228
8 日本ガイシ 2885-993
8 ダイキン工業 6200-2315
10 新日本製鉄 683-290
10 三菱電機 1110-552

と散々たる有様で、しかも、昨年値を上げた、ワタミ始値1730-終値2320)や、ファーストリテイリング(同7550-12980)、東京電力(同2800-3000)といったあたりの銘柄の名前は影も形もない。


今年の予想が、

1 信越化学工業
2 東京電力
3 任天堂
4 ファーストリテイリング
5 アサヒビール
5 武田薬品工業
5 東日本旅客鉄道
8 パナソニック
8 三菱商事
10 資生堂
10 コマツ

とガラッと変わってしまっているところと合わせて考えると、「中長期的保有を前提として挙げたのだろう」と善解するのもちょっと苦しいわけで・・・。

*1:それでも、予想としては1ドル=100〜115円くらいのレンジに留まっているのだが・・・。

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