冬休みに読みたい「バイブル」的問題作。

「BUSINESS LAW JOURNAL」で定評のあるレクシスネクシス・ジャパン社が、新たに「BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS」シリーズを出すことになったようだ。

第1号のネタは、先に紹介したBLJ2月号*1でも誌上連動企画が掲載されている「暴力団排除条例」。

噂を聞いて、早速書店で手にとってみた。

正直、この分野に関しては、あちこちで俄か仕立ての無料セミナーが開かれて大量の資料が配布されていたし、条例や対応に必要な契約条項の書式だって、インターネットで検索すれば容易に手に入れることができるから、わざわざお金を出して情報を買おう・・・という気はなかったのだが*2、ページを開いて見た時のレイアウトの体裁の良さや、巻末の「各都道府県の暴力団排除条例における特徴的な規定」一覧に魅かれたこともあって、思わず買ってしまった。

暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)

暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)

  • 作者: 大井哲也,黒川浩一,株式会社エス・ピー・ネットワーク総合研究室
  • 出版社/メーカー: レクシスネクシス・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 単行本
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簡単に感想を述べるならば、

「本書は冬休みの間に買って読んでみる価値がある“超”問題作」

ということになるだろうか。
以下、ざっと気付いたことを挙げてみる。


まず、一番評価できるのは、ページレイアウト、構成が工夫されていて、非常に読みやすいということ。
一般的な法律解説書にありがちな、「文字の海」に埋もれて読み進む意欲をそがれる・・・という事態は、少なくともこの本に関してはありえない。合間合間にQ&Aを入れたり、図表等も交えるなどして、飽きさせない工夫がふんだんに凝らされている。

しかも、実用書にありがちな“薄っぺら”さとも無縁だ。
他の類書と比べると、条例の解説等のボリュームは控えめに押さえているが、その一方で、実務的な知恵、テクニックはふんだんに盛り込まれていて、十分に読み応えのあるものになっている。

導入部分の第1章、第2章を危機管理コンサルの方が執筆されている、というのが全体的な読みやすさに大きく貢献しているのは間違いないところで、「大事なポイントをうまく抽出して、シンプルな表現で伝える」というコンサルのノウハウが、彼らの執筆部分にそのまま活用されているがゆえに、冒頭から一気に読み進めることが可能になっている。

また、彼らの担当する章で、スルガコーポレーションの事例や、未公表事例などを適宜織り交ぜつつ、生々しい実務の姿を伝えている、というところにもこの本の大きな特徴があり、類書と比較した場合の優位性があるのも間違いない。

冷静に眺めて見ると、書かれていることは、一般的な「内部統制、コンプライアンス」の話と共通しているところが多いし、ふんだんに盛り込まれている「チェックポイント」「チェックリスト」も、与信管理等で用いられるそれと、そんなに大差ないように思えるから、元々、不正取引のチェックに目を光らせてますよ・・・という読者にとっては、そんなに真新しさは感じられないかもしれないが、それでも、「暴排」という切り口で頭を整理するには、この辺の記述は有用だと思う(研修のネタ本としても非常に役に立つ(笑))。

次に、中盤で登場するのは、TMI総合法律事務所の弁護士の方々が担当されている「暴力団排除条項」等の解説部分。

ここは、そんなに真新しい記述があるわけではなく、書かれていることは、弁護士会等の解説ともそんなに大差ないのでは、と思う。

中には、「約款の中に一方的変更を行う旨の規定があれば、約款内容を一方的に変更して暴排条項を導入することも可能」と言いきっていたり*3、「自動更新条項の廃止」というあまり現実的ではない方法が「契約上の工夫」として記載されていたりするなど*4、「ん?」と思うところもあるのだが、その辺はご愛嬌。

英文版の誓約書や暴排条項が盛り込まれているところなど、渉外系も手掛ける事務所ならではの“特典”もあるし、上場審査にスポットを当てた章を設けているところも、らしいな、と思うところである。


さて、いろいろ書いてきたが、ここまでは「実用的法律書」として、一応想定できる範囲内のものだと思う*5

だが、最終章の「暴力団排除条例の解説」は、ちょっと想像を超えている。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20111224/1324835138

*2:そもそも、一連の「反社」キャンペーン自体に、当局のご都合主義的な胡散臭さを感じているだけになおさら・・・。

*3:131頁。

*4:137頁。

*5:本書レベルのクオリティを維持できている書籍は少ない、とはいえ。

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