姿の見えない敵

今、自分は知財法務の仕事をやっている。
ここ数年、世の中では妙に持て囃されている分野である。


もっとも、特許をたくさん持っているわけでもなく、
かといってコンテンツビジネスで稼いでいるわけでもない当社の場合、
知財といっても、「ビルの谷間のラーメン屋」の如く*1
細々と仕事を持っているというのが実情。


どれだけ存在感がないかと言えば、

  1. 知財報告書」の公表が社内で話題に挙がった時に、「当社の知財収入は会社全体の事業収入に比して些少につき、時期尚早」と3秒で却下*2
  2. 会社説明会で学生に、この会社にも知財部門なんてあったんですか〜と感心された。
  3. それだけならまだしも、しばらく会ってなかった会社の後輩に、「今知財の仕事やってんだ〜」と言った時、「とうとう先輩も転職されたんですか〜」とマジ顔で言われた。

などなど、エピソードにはこと欠かない。


もっとも、そうはいっても、
争いごとには少なからず巻き込まれるわけで。


今、抱えている仕事の一つに、ある特許に絡んだ案件がある。


遡れば数ヶ月前、特許庁から送達されてきた「無効審判」手続開始の通知を見て、
「やられた・・・」と思った。


問題となっていた特許は、ライセンスをめぐって以前に他会社ともめた経緯のあるもの。
請求人は聞いたことのない個人の名前。
明らかにダミーの請求人を使ったステルス戦闘機ばりの攻撃=無効審判請求である。


何でこんなことができるかと言えば、
特許の無効審判の請求人適格に制限がないからであり、
決して違法な行為ではないのだが、
ニコニコと仲良しのフリをして、裏で相手を刺すようなマネをするのは、
はっきり言ってフェアではない*3


よくよく調べて、大体相手の正体はつかんだ。
そして何より、申立理由書を見る限り、うちが負けるはずはない、
と当社の技術陣も弁理士も自信満々であった。


だが、先日届いた審決を見たら、
思いっきり、特許を無効とする云々と書いてあった・・・。
(おいおい、みんな、あの時の自信は何だったんだ・・・(笑))


負けた理由にいろいろ思い当たる節はあるのだが、
裁判所に持っていって、ひっくり返せないほどのものではないだろう。
というわけで、これから完膚なきまでに、
卑怯な奴さんをぶちのめす戦略を立てることになる。


売られた喧嘩は、100倍にして返す、というのが、
法務担当者としての自分のポリシーである。
しかも相手が企業と分かっていれば、何ら良心の呵責なく、
喧嘩に集中できるというわけで*4

*1:故・小渕首相の名言

*2:実態としては決してそんなことはないのだが、仕事増えるのが面倒くさくて誰も反論しなかった

*3:公的にはこういう行為は自粛する、という申し合わせがあるはずなのだが、実態はそうではない

*4:これが個人相手の一般民事だの労働だのになると、そうはいかないのがつらいところ

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html