王者の風格

夏の高校野球決勝。
去年もそうだったが、最後の決勝だけは休みの日にあたるので、
最初から最後まで見ることができる。


試合が二転三転、派手な一発も飛び出した去年の決勝戦に比べると、
今年は、スコアこそ競っていたものの、
得点の多くは失策や内野安打絡みで、すっきりしない展開だったことは否めない。


ただ、結果として、駒大苫小牧の連覇の瞬間を見ることができたのは、
自分としては、非常に嬉しかった。


最後に勝負を分けたのは、
駒大苫小牧の前年度王者としての「余裕」だったように思う。
2番手・田中投手の制球が定まらず、
中盤ではバント失敗を連発し、
キャプテン林が何でもないゴロを悪投して、結果同点に追いつかれても、
その裏にきっちりと小技を決めてお返しできる「余裕」。


思えば彼らは、前年度覇者にもかかわらず、
優勝候補にあまり名前も挙がることがなかった。
そういう意味では、決勝戦といえども、
優勝を宿命付けられた常連校のような悲壮感を感じることなく、
伸び伸びとプレーできていたのだろう*1
それでいて、昨年のレギュラーも残っていて、
センバツにも出場しているのだから、
チームの経験値は決して低くない。


それが、最後の最後で、
余裕を持って相手を突き放す試合運びにつながったのだと思う。


あくまで挑戦者の魂に王者の風格が加われば、
これほど強いものはない。


ちなみに、今日の試合で光っていたのは、1番・林のセンスの良さ。
追いつかれた直後の巧みなセーフティバントが、
この試合を決めたといっても過言ではない。
去年の決勝戦でも先制打を放って輝きを放っていた好選手。
プロが触手を伸ばす可能性は十分にある。


そして、最後の最後になって三者連続奪三振
最後の一球がMAX150キロという快投を見せた、2年生の田中投手。
監督と瓜二つ(笑)のメガネの4番打者・本間君ともども、
来夏も甲子園で見たい選手。


京都外大西は、今日の先発ピッチャーが良かっただけに、
1年生の本田投手への継投策にこだわった采配が裏目に出たといえなくもない*2
それでも、勇退を控えた監督を、ドラマチックな逆転劇を繰り返しながら、
初めての決勝戦まで連れて行くあたりは、見事だった。


相変わらず、閉会式の挨拶は興ざめだったが*3
野球が、過度な演出なしでも、
十分に「魅せる」ことのできるコンテンツであることを再確認できただけで、
個人的には満足である。

*1:今年、宇部商がベスト4まで勝ち残っていたのを見て、20年前の決勝戦を思い出していた。あの頃のPL学園の選手たちがどれだけのプレッシャーを受けて戦っていたのか、想像するだけで恐ろしい。最近では春夏連覇のかかっていた横浜あたりもそうだろう。そのプレッシャーをはねのけて優勝できたのは、ひとえに清原、桑田、松坂といった超高校級の選手の存在があってこそ。それがなければ、早々と姿を消すのがオチである。これまで世代を超えた強さを誇る「常連校」が多数ありながら、57年間大会を連覇するチームがなかったという事実が、それを物語っている。

*2:交代後毎回失点。すっぽ抜けの球も多かったし、さすがに連投続きで明らかに疲れが出てしまっていた感じ。

*3:某大臣が開会式で野球留学批判をした大会の締めの挨拶で、「全国的な力の均衡化」を誉めそやす言葉が聴けるなんて思いもよらなかった(笑)。甲子園に出るために、親元を離れて3年間頑張ろうとしている高校生と、そういう環境を作ろうと努力している学校関係者(もちろん学校宣伝を兼ねてのことだろうが)を批判する資格など誰にもないはず。それまで甲子園での勝利に縁遠かった地区の学校が強くなれば、地元の高校生も刺激を受けるだろうということは容易に想像できるし、それがあって初めて「全国的な力の均衡化」が可能になる。あの大臣発言は、92年の高野連会長「松井敬遠批判」発言以来の「大人の」大失言だったと思う。

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