「クレヨンしんちゃん」事件の頃は他人事だと思っていたが、
アジアの商標ブローカーは怖いなぁ・・・と思う今日この頃。
最近、中国をはじめとしたアジア諸国が
“知的財産権の保護強化”を謳うようになっていることを歓迎する向きがあるが、
“知的財産権”が国ごとに独立して成立する権利である以上、
自国の権利のエンフォースメントが強化されることで、
かえって、本来正当な事業活動を行うことができたはずの外国企業が、
足元を掬われることもあるわけで、
特に厳格な先願主義ルールが適用される“商標権”をめぐっては*1、
現に、外国での“商標権”を取りそこなった企業が、
名も知らない商標ブローカーに攻撃をうけるという事例が起きているわけである。
各国の商標法には、
「著名な商標と同一又は類似」の商標については登録を阻却する、
という規定が入っていることが普通だから、
本来の権利者に無断で外国の著名ブランドを冒認出願したところで、
そんな商標の登録が認められるはずがない、
というのが日本の感覚なのだが、
この「著名性」の判断が、国によってまちまちなのが曲者で、
しかも、その判断に外国での当該商標の「著名性」も取り込むのか、
それともその国の国内での「著名性」だけを見て判断するのか、
といった運用についても、まちまちなので、なおさらたちが悪い。
日本の商標法には、
他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)(4条1項19号)
という規定が存在するし、
アジア諸国(韓国など)にもこれと同様の規定を持っている国があるのだが、
少なくとも日本国内では誰でも知っているような有名なブランドなのに、
かの国では、なぜかあっさりと「著名性」が否定された、
という事例は、数多ある*2。
商標ブローカーに勝手に取られた“登録商標”の存在に怯えながら、
ビジネスを進めなければならない、というのはいかにも屈辱的な話である。
泥棒に“追い銭”を与えることを正当化するための道具として
“知的財産権”が使われるのは、全くもって道理に反しているが、
それは、“知的財産権”という権利の重要性が広く知らしめられたことの
裏返しでもあるわけで、なんとも複雑な気分になる*3。