先日本屋で非常に対照的な二冊の本を入手した。
いずれも、公刊されたばかりの書籍であり、
かつ、今の自分には“畑違い”の書籍なのだが、
読み始めてみると、我ながら良いチョイスだったと思える(笑)。
一冊目は、中里実、神田秀樹両教授が編著者となって、
租税法に関する最先端の事例研究、問題提起を行ったもの*1。
- 作者: 中里実,神田秀樹
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 単行本
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まださわりの部分しか読んでいないし、
読んだところで、どこまで深く理解できるかは心もとない限りなのだが、
「はしがき」や、冒頭の中里教授の論稿*2を読んだだけでも、
「租税法の研究・教育に対して1つの問題提起を行った」*3
本書の野心的な香りが十分に伝わってくる。
自分の会社の税務関係の実務といえば、
通達をしっかりマスターして、国税の“嫌らしい”攻撃をかわしていく、
というところで留まっており、
次々と登場してきている新しいスキームに、
“自力で”乗っかっていくまでには至らない、というのが実情なのではあるが、
これまで、かすかな“香り”をかぐことしかできなかった
“最先端の議論”の一端に触れることができるというのは、
喜ばしいことだと思う。
一方、もう一冊の方は、
法務省民事局付検事であり、LECの元カリスマ講師として知られる、
葉玉匡美が編著者となった『新・会社法100問』。
- 作者: 葉玉匡美
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/11/18
- メディア: 単行本
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“論文対策の決定版!”として、
現在、新旧司法試験受験生の間で話題沸騰(!?)の本であるが、
パッチワークのように雑然と収納されている知識を
整理したいと願っている企業の法務担当者にとっても、
重要論点をコンパクトにまとめた、この手の“参考書”は、
欠かせないツールである*4。
予備校ですら、まだ十分に新会社法に対応したテキストを出せていない段階で、
こういう本を先手を打って出してしまうところに、
葉玉検事の“プロ”としての心意気を感じる。
いずれも、いわゆる“実務書”の領域からは外れたものであるが、
単なるハウツー的な“実務書”と比べ、格段に“格調高い”本であるのは間違いない。
というわけで、しばらくは実利半分、“頭の体操”半分で、
上記2冊を活用することになりそうである。
*1:本書内のコメントによれば、「ジュリストに連載された「企業税制の理論と実務」というシリーズに、書き下ろしの10論稿を加えて成り立っている」もの、だそうである。
*2:中里実=神田秀樹『ビジネス・タックス』所収中里実「租税法における新しい事例研究の試み」23頁以下(有斐閣、2005年)
*3:中里実=神田秀樹・前掲「はじがき」より
*4:余談だが、自分が初めて法務の仕事に就いた頃、法務部の書棚には『注釈民法』やコンメンタールと並んで、LECの基本構造テキストが置かれていた。非法学部出身だったり、学部時代の記憶が消失していたりする多くの担当者にとっては、予備校のテキストが、まず最初に手にする“法律書”であった。