今日は、全国の国立大学で法科大学院の入試が行われたようである。
上位国立であれば、
「母校に残れるか、戻れるか」が大きな意味をもってくるところだと思われ*1、
特に在学生にとっては、
それまで机を並べてきた“仲間”と“袂を分かたなければならない”
可能性が出てくることを考えると、少し気の毒な気もする*2。
さて、今月号の法教。
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2005/11/19
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今回は、「尋問技術」の重要性、
それも、証人に対して「どう聞くか」という技術がいかに重要であるか、
ということを相当念入りに説かれている*4。
パソコンを利用した尋問事項書の作成テクニックのくだりや*5、
「注意則」について述べられたくだり*6など、
民事事件にも応用が利く、という点でいろいろと参考になるところも多い。
民事訴訟では、証人尋問の比重が、刑事事件ほど重くないとはいえ、
重要な事件では、会社側証人に対して主尋問のアンチョコと、
反対尋問の想定問答を準備し、数度にわたるリハーサルを経て
本番に臨むことが多い*7。
だが、本稿で述べられているほど徹底して尋問に備えているか、と問われれば、
まったく自信はない。
代理人の側でも、そこまで尋問に重きを置かないことが普通であるし、
担当者の側も、“訴訟慣れ”してしまうと、
どうしても、1件1件に注ぐ情熱が薄れがちになる。
それゆえ、“プロフェッショナル”の仕事の真髄を見ることができる
本稿に触れると、身が引き締まる思いがするのである*8。
その他、最近の事例を素材にした論稿として、興味深かった記事は、
「判例分析民法」*9、「新判例から見た刑法」*10あたりか。
特に山口教授の記事は、
「騒音おばさん」がちゃんと刑法の論点になりうることが分かっただけでも、
意義がある(笑)。
*1:「残れなかった」ことが結果としてプラスになることも大いにありうるだろうが、それ以前の問題として、精神的にあと数ヶ月をどういう気持ちで過ごせるか、が変わってくるだろう・・・。
*2:一事が万事、「塞翁が馬」ということわざはあてはまるし、気の持ちよう次第ではあると思うのだが。
*3:佐藤博史「公判弁護の技術と倫理(3)」法教303号97頁(2005年)
*4:山室元判事(現・東大教授)の『刑事尋問技術』を批判するあたりの舌鋒の鋭さも相当のものである(『刑事尋問技術』は、残念ながら尋問技術について書かれた書物ではない」とまで言い切る。佐藤・前掲100頁)。
*5:佐藤・前掲102-104頁
*6:佐藤・前掲104-109頁
*7:項目が100項目以上にわたることも稀ではない。なので、企業が被告になった事件で、原告側の代理人がどんなに頑張っても、尋問から(原告にとって)有意義な回答を引き出すことは難しい。
*8:この先生の講義の評判や他の実務家の方の評価を聞いてみたいものであるが、残念ながら自分にそのような機会が訪れることは、あまり期待できない。