先日のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20051116/1132159031)を
フォローするかのようなコラム記事が、28日の日経の法務面に載っている*1。
同コラムは、
中国に進出しようとした会社が、
現地で中国の事業者に先に自社商品の商標を登録されることに気付き唖然とする、
という実態を生々しく伝えた上で、
そのような現状に対して識者が提唱する「対応策」を紹介するものである。
現地の弁理士を通じて中国商標局に商標取消を申請しても、
「今分かっているのは相手が個人事業者ということだけ。悪意を証明して登録の無効審判を勝ち取るには、他商標の登録内容なども確認しなくてはならない。解決は何年先になることか。」*2
と、ため息をつかざるをえない実態。
アンダーソン毛利友常の森脇章弁護士は、
「日本企業側のリスク管理の甘さ」を指摘しているが、
商品の世界展開を前提としている大手メーカーと比較されても・・・
というのが率直な感想。
「アパレル業界など、最近中国を消費市場として意識し始めた企業は海外進出に慣れていないため、知財管理が後手に回っている」*3
そのとおりではあるのだが、
問題は、進出を検討し始める以前に、
第三者が勝手に商標登録をしてしまっているところにある。
「あらかじめ商標を登録するコストをかける余裕」が仮にあったとしても、
国内と同じように中国にも商標を出願せよ、というのは、
「進出の具体的な計画」がない限りは無理な注文である。
「中国商標局の統計によると2004年の中国企業による登録件数は20万件以上と3年前の3割強増加。出願件数は同2倍以上に伸びた。」
皮肉なことに、知的財産権に対する意識を浸透させたことが、
制度の悪用を招く、という矛盾がここにはある。
企業が迫られる選択。
「無効審判の結果が出るのは数年先。ビジネスチャンスを逃さないためには、買い取りや改名などの譲歩も必要」*4
というのは理解できるとしても、
「関係者によると、商標の買い取りには2000万−4000万円程度要求されることが多く、場合によっては億単位の額を請求されることもある。中国には商標の売買サイトもあり、「もし自社の商標が先行登録して売りに出されていた場合、時間を節約するために、日本企業がこうしたサイトから商標を買ってしまう可能性は高い」*5」
ほとんどホラーの世界だ。
予防法務的な対策は確かに存在するのだろうが、
結局のところ、そこには少なからずコストがかかる。
積極的に現地に進出するわけではないが、
かといって、まったく商品を売らないわけではない、
という、今の状況を考えると、
なかなか打開策を見出すのが難しい。
そして、問題が起きているのは、中国だけではない、
という点が、なおさら担当者の悩みを深くする・・・*6。