Annual Report

様々なところでの告知を見て、気になっていたのだが、
なかなか書店で入手できずにいた別冊NBL106号、『I.P.Annual Report 2005』*1
ようやく、手に入れることができた。

知財年報 (2005) (別冊NBL (No.106))

知財年報 (2005) (別冊NBL (No.106))


この年報は、

「1年間に公表された知的財産法に関する判例や論文を紹介して解説し、その他の産業界や国際的な動きなども紹介すると共に、現在知的財産法の分野で話題になっているテーマに関する論述を特集として登載して、一般読者が本誌一冊で一年間の知的財産法をめぐる情報のエッセンスを、単に表題だけではなく、ある程度の内容に至るまで知ることができる雑誌として企画されたもの」*2

であるが、同時に、
早稲田大学「21世紀COE」の成果物としての意味合いも持っているようで、
執筆担当者の多くを早大所属の教授陣および院生、
そして早大COE研究会(RCLIP研究会)で発表者を務めた
研究者、実務家が占めているのが特徴的である。


従来、この手の企画は、
東大を中心とした研究者グループや、
特許庁弁理士会といった“公的”機関が手がけていたことが多く、
それゆえに今回の刊行は、極めて“野心的な試み”のように思われる。


また、本書は、
判例の動き」「学説の動き」「諸外国の動向」
著作権保護の将来像」(弁護士、判事らの寄稿論集)
知財セミナー報告」(早大COEのセミナーの報告集)
で構成されているが、
特に「学説の動き」として、
ここ1,2年で世に出た様々な論稿がまとめられているのは、
日頃文献のチェックが後手に廻りがちな企業実務者にとっては、
有難いものであり、資料価値は高いものと思われる*3
飯村敏明判事、飯塚卓也弁護士などビッグネームの寄稿論文とあわせて、
値段の割りに、お腹一杯(笑)になりそうな中身であるのは間違いない。


欲を言えば、
判例の動き」のソースが「判例時報掲載判例」となっており、
速報性に乏しいことに、やや不満はある*4
今は、最高裁知財高裁のサイトから、
容易に判決文を入手できる環境にあるのだから、
そこまで踏み込んで取り上げていただけると、
なおさら、資料としての価値も、“野心作”としての価値も
高まったのではないかと思う。


あと、この手の企画は、
毎年発行を匂わせつつ、単発に終わってしまうことも多いから(笑)、
ユーザーサイドとしては、是非とも刊行時の初志を貫徹していただき、
継続発行していただけるよう、お願いしたいところである。

*1:別冊NBLシリーズは、業界の人間の手元に届いてから一般の流通ルートに載るまで、結構なタイムラグがある。ま、業界人向けの刊行物なので、やむを得ない面もあるが・・・。

*2:渋谷達紀=竹中俊子=高林龍「刊行にあたって」より。

*3:もっとも、挙げられている文献が偏っていないか等は、読む側で精査する必要があるだろうが・・・。

*4:渋谷達紀「知的財産法判例の動き」別冊NBL108号3頁脚注参照。なお、渋谷教授によれば、本稿はジュリストに以前同教授が連載していた『重要判例解説』の“続編”ということであるが(現在ジュリストの同稿は、相澤英孝教授が担当されている)、2005年の『Annual Report』と位置付けるのであれば、ある程度時間を置いて出すことが前提の『重要判例解説』とは異なるコンセプトでまとめていただいても良かったのではないかと思う。

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