“世相”の反映

2006年度の法科大学院入試の結果が続々と発表されている。
http://www.houkadaigakuin.com/


東大ローの結果が本日出たこともあって、
多くの受験生にとっては、一つ山を越えた、というところだろうか。
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-1/news/20051216.html


叩き上げの「法務担当者」として、
法科大学院という制度自体には、
いろいろと複雑な思いを抱いているところではあるが、
合格された方々には、何の罪もない。


新卒の方の中には、
社会に出るまでに2、3年という歳月をさらに要することのデメリットを
危惧する方も多いようだが、
ストレートに就職したとしても、
「会社に入ってからの2,3年で得られるもの」などさほど多くはない。
(経験も給料も・・・)


勤め先を辞めていく場合であっても、
長い目で見れば、2、3年という時間は、たいした長さではない(と思う)*1


大学という場所は、
社会から隔絶されているように見えて、
実は、最も冷静に社会を見つめられる場所でもある。
(特に社会科学系の大学院であればなおさら)


「院卒」という肩書が*2
社会の中でプラスに働くようになる日も近いだろう*3


今回、合格された方々の、
これからの健闘を願ってやまない。


ところで、先に紹介した東大ローのサイトで、
過去3年の入学者選抜の結果を見ることができる。


平成18年度選考
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-1/news/20051216.html
平成17年度選考
第二段階
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-1/2005/news/20041217.html
第一段階
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-1/2005/news/20041118.html
平成16年度選考
第一段階のみ
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-1/2004/news/040109.html


未修コースの受験者数推移
1136名→539名→566名
既修コースの受験者数推移
759名→869名→957名


この数字が、何を物語っているかは、一目瞭然であろう。
ちなみに、公表されている他学部・社会人出身の合格者は89名。
未修コースの定員100名にも満たない。


上記は、一つの大学の例でしかないが、
他の大学も未修コースに関して言えば、
数字的には同じような推移をたどっている。


これが、“夢”のはじけた法科大学院の現実。
いわば“世相”の反映ともいうべき現実であり、
制度設計者の方々に直視していただきたい「現実」でもある*4

*1:もっとも、こちらの方は、その人の置かれている立場にもよるので、何ともいえないが。

*2:専攻にもよるが・・・。

*3:今でも、世の中で言われているほどマイナスに働いているとは思わないが、資格持ちの“プロ”以外に“スペシャリスト”が尊重されていない現実があるのも事実である。もっとも、企業の採用の現場でさえ、多かれ少なかれ、院卒のキャリアを重視しようとする流れは出てきている。

*4:上の数字からは、多種多様な階層の人々に法曹への「門戸」を広げる、という当初の「理念」(それが「未修コース」の意義であったはず)の後退、そして、現役法学部生(又は法学部出身者)の「延長戦」(人によっては、「敗者復活」戦なのかもしれない。)の場として法科大学院が機能している実態を垣間見ることができる。

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