哀しき『戦場のメリークリスマス』

トリノ五輪出場を決めるフィギュアスケート全日本選手権


今日の女子ショートプラグラムで、
少なくとも、テレビで見た安藤美姫の滑りは、
ここ何週かの中では一番「完璧」に見えた。
ジャンプでノーミス*1
スピンもきっちりと決めてきた。
慎重に慎重に、という気持ちがブラウン管の向こう側からも伝わってくるようで、
ぎこちなさは残ったが、好感の持てる滑りであった。


・・・だが、現実は残酷である。


目下絶好調の浅田真央を下回ったのは仕方ないとしても、
女王の貫禄十分、技術的に抜群の冴えを見せた荒川静香
ここぞの表現力を存分に発揮した村主章枝に大差を付けられ、
元々定評のあった技術力で大きくアピールした恩田美栄と、
依然として好調をキープしている中野友加里にも
上をいかれる6位スタート。


自分は、個々の要素について採点できる能力はないが、
確かに全体として見たときに、
彼女にはアピールするものがなかったのは確かで、
今日だけを見れば、ジャンプが光る恩田*2
スピンに抜群の冴えを見せる中野*3に比べて、
後ろの順位になってしまうのもやむを得ないところだったと思う。


今シーズンの安藤のSPの『戦場のメリークリスマス』は、
決して悪いプログラムではなく、
むしろ問題は、「フリー」の選曲と演技だけに、
明日だけで上位に食い込むのは
厳しい状況なのではないだろうか。


選考会レースの現時点での持ち点は、

1.安藤美姫  1865点
2.中野友加里 1643点
3.恩田美栄  1564点
4.荒川静香  1560点
5.村主章枝  1550点

全日本の優勝ポイントは600点で、以下50点刻み(6位で350点)となる。
安藤の7位以下は考えにくいから、
実のところ、荒川、村主は優勝しても安藤を逆転できない計算だ。


明日のフリーでも荒川、村主が1、2位を独占すれば、
中野が3位以内に入らない限り*4
安藤、荒川、村主のCMトリオでめでたく代表枠を独占できることになる。


だが、今シーズン、ここまでの戦績を見る限り、
そのような結論は腑に落ちないものがある。


荒川と村主は、最終的なポイントにかかわらず、
今日の滑りだけで五輪出場は当確といって良い*5
だとすると、問題は、言わずもがな、
中野、恩田、安藤の中から選ばれるのが安藤で良いのか、
という一点に集約される。


シーズンごとに構成が変わる(それによって当然に審判員の評価も変わる)
フィギュアスケートの世界で、
昨年の実績を持ち点加算しているのもおかしな話ではあるし*6
GPファイナルで浅田にも中野にも勝てなかった安藤に対して、
国際審判員が本番でどんな評価を下すか、を考えると、
果たして安藤美姫トリノに送り出すのが得策なのかどうか、
スケート連盟は再考すべきだと思う。


本人が出たがっているのも、
連盟が出したがっているのも分かるのだけれど、
今の彼女の滑りでは、
戦場のメリークリスマス』がトリノのリンクに哀しく響くだけだ・・・*7


それにしても、
今日の村主の滑りは絶品だった。
不覚にも、フィギュアスケートを観て涙したのは、
何年か前の世界選手権でミシェル・クワンを観て以来である。


とりあえず、明日早起きできたら、
ダメ元で代々木まで行ってみようと思う。


たぶん、この戦いは、
10年は語り継げるエピソードになると思うから。

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*1:のように見えたが、コンビネーションジャンプは回転不足だったそうです・・・orz。

*2:ダブルアクセルなのにもう一回転できるくらいの高いジャンプだった。

*3:最初のジャンプでヒヤリとさせられた分、点数にも響いたか。

*4:浅田がいる限り、それはまず無理だろう。

*5:というか、そうであってほしい。仮に荒川か村主が浅田に抜かれて3位に落ちると、中野が4位に入った場合に順位逆転が不可能になるが、国際舞台を戦う上でアドバンテージの大きい2人のいずれかを欠くことになるというのはあまりに痛い。

*6:安藤と中野とでは基礎点で320点もの差が付いている。

*7:テレビ放映に合わせて明日には出場内定選手を発表する、という噂もあるが、某掲示板でブーイングの嵐にならないことを願うしかない。

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