ついに来たその時。

堀江社長以下、ライブドア幹部逮捕。


逮捕情報がちらつくことによる市場への悪影響を恐れたのか、
それともライブドア側の“反攻”を恐れてのことかは
分からないが、この国では「逮捕」された時点で、
社会的には「有罪判決」を受けたのと同義になる。


よほどのことがない限り、
堀江社長の命運は尽きたというほかない。


自分は、会社の帰りがけに、
電車の中で号外を持っている人がいるのを見て
このニュースを知ったのだが、
あらためて報道を見ても、
相変わらずワンパターンな内容で批評する気もおきない*1


「転落の構図」を滔々と述べるキャスター、
「犯罪」が起きれば決まって「紋切り型」のコメントをする
コメンテーター(検察関係者も含む)・・・*2


そんな中、NHKのニュースで、
西村ときわの太田洋弁護士が解説をされていたのは新鮮であった。


太田弁護士は、企業法務(特にM&A)分野の第一線で
ご活躍されている先生である*3


そんな先生に、ブラウン管の向こう側から
今回の「事件」を解き明かしていただけるのであれば、
事件関係者も少しは救われるのではないかと思う*4


ライブドアをはじめとする“ヒルズ族”の中に、
“グレーゾーン”に足を踏み込んでいた会社がいくつかある、
というのは以前から話題になっていたことだ。


だが、彼らは裏社会の人間とは異なる。
ライブドアでは宮内取締役自身が税理士だし、
そこまで行かなくとも、
法律事務所や会計事務所と提携して、
“合法的な”節税&金儲けスキームを考案していた会社が多かったはずだ。


もちろん、これまでのビジネス慣行からすれば、
そのような行為の多くは褒められたものではなかっただろう。


だが、生まれたばかりの企業が、
トヨタソニーのように余裕を持って行動できるはずがない。
コンプライアンスCSR、といった言葉を躍らせ、
大企業と同じような“行儀の良い”行動規範を
ベンチャー企業に押し付けることが、
適切だとは思えない。


もし、仮にそのような“押し付け”がなされたとすれば、
新興企業の成長スピードは鈍化し、
エスタブリッシュメントを利するだけの結果に終わるだろう。


前のエントリーにも書いたが、
今後求められるのは、
ライブドア社の行った個々の行為について、

①元々法律で「クロ」だったものなのか
②元々法律上は「グレー」だったが「可罰性がある」ものなのか、
それとも、
③倫理的には問題があるが、法律上は「グレー」だし、法的には可罰性が乏しい、というべきものなのか

ということをきちんと切り分けて論ずることだと思う。


③をシロとすることに疑問が残るのであれば、
ルールを変えて、以後「クロ」とすれば良い。


メディアに誘導された“処罰感情”に後押しされて、
①〜③をごちゃまぜにしたまま、「クロ」としてしまうとすれば、
後に続く新興企業を必要以上に萎縮させ、
後々まで禍根を残すことになる。
そのような事態は避けねばならないだろう。


常に有罪に向けて一定のストーリーを紡ぎ出そうとする検察に、
上記のような“真相解明”を期待することができるのか、
疑問の声もあがっている。


だが、組織の目標がどこにあるにせよ、
当事者が“グレーだが合法”と判断して行った行為については、
それを「クロ」と断言するだけの確固たる“理屈”を示す義務が、
検察関係者(&規制当局)にはある、と思うのだ。


そして、検察、弁護人、裁判官の三者
知恵を絞ってせめぎ合う中で、
法の解釈・適用・宣言による社会規範作り、という
“司法の真髄”が発揮されることを今は願う他ない・・・。

*1:今般の報道は、良くて「○○をやりました、よってクロ」というパターンのものに成り下がっている。「本来、かくかくしかじかのルールになっているのだが、ライブドアは○○をやっていて、それがルールの中の△△に抵触するからクロ」というところまで書いてこそ、真の報道というべきだろうに。

*2:そのくせ、堀江社長が無罪放免となれば、手の平を返したように「捜査機関の落ち度」を批判するはず。もし有罪→服役というような事態になったとしても、社会復帰すれば『ホリエモン塀の中の○○日間』(他に予想されるタイトルとしては『想定の範囲外−塀の中の○○日間』といったものが考えられる)なる本や番組で商売をしようとするのが彼らのやり方なのだ。

*3:何度かお話をうかがったことがあるが、ソフトな語り口で切れ味鋭い最先端の理論を解説される姿が大変印象的であった。

*4:先日日経新聞にもコメントが掲載されていたし、今回の事件に関しては、太田弁護士は積極的に発言されているようである。

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