企業法務戦士の生きる道

sophia_flosさんのブログ経由で、
「法務の国のろじゃあ」氏の
「企業法務マンの生きる道?」というエントリーを知る。
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9000227


軽快な語り口調の中に、
法務のプロとしての含蓄ある言葉の数々。
自分なんぞ、まだまだひよっこだと感じさせられるエントリーで。


以下、若干の感想として。


「「通訳」としての法務部員の能力」の重要性は、
日々自分も感じているところで、
限られた時間の中で、
社外の専門家に対して問題となっているポイントをいかに的確に伝えるか、
そして、それをいかに社内にフィードバックするか、
というところに、企業法務部員の腕の見せ所があるのだと思っている。


事業部門にしても、管理部門にしても、
第一線にいる人たちというのは、得てして目の前の仕事で手一杯で、
社外の専門家に対して「語るべき言葉」を用意する暇すらないことが多い。


そこで冷静に状況を見極めつつ、
つなぎ役として効果的な“助け舟”を出し、危機を打開する、
あるいは危機を未然に防ぐ、というのが、
標準的な法務担当者の役割として最重要視されるものであることは
間違いない。


得てして自分の場合、
“つなぎ役”だけでは我慢できなかったりもするわけで、
契約のスクリーニングやってて納得いかないと、
コメント返すより先に
次の交渉に自分で乗り込んでいったりもしているのであるが(笑)*1


自分は通常のビジネスの中で“センス”などというものが
求められる場面はそうそうあるものではない、と思っている*2
ただし経験は重要。
過去の成功経験、失敗経験をどれだけ自分の財産として再構成できるか、
成功経験にこだわりすぎてもだめだし、
失敗経験を過度のトラウマにしてもだめ。
客観的に自分の経験や先人たちの足跡を再構成して、
目の前の“問題”に対処していく能力こそが、
ビジネスを動かしていく上で求められるものなのだと思う*3


企業の中にいる以上、ビジネスに無縁な部署など本来存在しえないはずだ*4
ゆえに、法務部門といえど当然にビジネスとのかかわりが求められる*5
そして、そこで必要なのは、法律の知識やテクニック以上に、
「経験」であるから、
いかに法曹資格保持者が大量培養されても、
これまで企業法務を支えてきた法務部門の人々の役割が
失われることはない・・・・・はずである。


ここまではろじゃあ氏のご意見に賛同する。



だが、自分は、そんなに法務部門の未来を楽観視してはいない。


ろじゃあ氏自身がコメント欄で述べられているように、
「養成しがたい法務部員の能力」は、
それを理解する上司があってはじめて生きてくるもの。


いかに地道な経験を積んでも、
会社幹部の“信頼”が、経験よりも“資格”という“肩書”
に向けられてしまえば、
経験を活かすことのできる場も、自ずから限られてくる。


法曹大増員時代を迎え、
法曹の卵たちの“就職先”探しに躍起になっている
エライ先生方の“トップセールス”に、
一企業法務戦士として太刀打ちできる自信は、とてもじゃないが、ない。


今、いかに法務担当者という職責を担っていたとしても、
プロパーとして“つぶし”が利く生え抜きの法務担当者は、
“プロ”として企業に入ってくる法曹資格保持者、
ないし法務博士たちに比べると、
人事サイドとしては“動かしやすい”人材であることは間違いなく、
ゆえに、将来的には「法務」というポジションに止まり続けることが
許されなくなる可能性も高い。


・・・というわけで、
「法務」というポジションにこだわり続ける限り、
目の前に待ち構えているのは大きな危機でありリスクである。
そんな微妙なポジションを考えると、
10年後に目を向けることなどとてもできない。


今、自分にできることは、
交渉に同席してもほとんど何もできなかった自分に
「いてくれるだけで安心」という有難い言葉をかけてくれる
社内のクライアントの期待に少しでも応えられるように、
仕事のスピードと精度を高め続けること。


そして、未だ“組織のあり方”が定まらない
社内の法務部門の足元を固めて、
次世代の企業法務戦士を目指す後輩たちのために道を開くこと。


たぶん、それは終わりのない作業。
だが、会社の中で生きている限り、
“永遠”に一つの作業を続けられることなどありえない。
自分の法務担当者としてのキャリアにも確実に“終わり”がある。


だから、自分自身、
やるべきことをやって“一区切り”ついたと思えたときに、
新しい道を探すことになるのだと思っている。


仕事を離れて、プロの法律家を目指すか、
“必殺仕事人”的企業法務戦士として会社を渡り歩くか、
それとも裸一貫で外国に乗り込むか・・・(これはたぶんない(笑))*6


“一区切り”が週明けに訪れるのか、
それとも10年後、20年後に訪れるのか、
それすら今は分からないのだが*7
「法務戦士」の看板だけはできることなら外したくない*8


人生の中でこだわり続けるものが、
一つくらいはあっても良い。


今は、そう思っているから。

*1:もともと、法務部員として採用されたわけではないし、一応法務の肩書きがついてからも、しばらくは兼務兼務で、一日の半分も法律に触ってなかった時期が長かったせいで、後ろで見ているだけだと却ってイライラするのである(笑)。

*2:そもそも会社の仕事の中で、純然たる“ビジネス”マターとして扱われるべき問題がどれほどあるのか(これは“ビジネス”をどう定義するかにもかかわる話だが、長くなるので詳細は割愛。ここでは、あくまで、世の中一般的に“ビジネスと思われているもの”を念頭において筆を進める。)、という問題も別に出てくるのではあるが・・・。

*3:それができる能力を「センス」という言葉で語るのであれば、その意味では「センス」は必要なのかもしれないが。

*4:実際には、“無縁”だと思っている人々が多数いることも事実なのだが・・・。

*5:そもそも「法務部門にもビジネスの知識が必要」という言い方がされてしまうこと自体に問題があると思う。

*6:何せ、留学候補生にエントリーされて「国内と海外どっちがいい?」と聞かれたときに迷わず前者を選んだ人間ですから(笑)。欧米は言葉の壁以上に、文化と歴史の壁を感じるので、行くとしてもアジア圏だろうな、と。

*7:元来easygoingな性格で、何とかなるさ、と思い続けてはや10年弱・・・。

*8:「企業」の看板は、いつ外しても良いつもりでやっているのだが(笑)。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html