五度目の正直(その1)

久しぶりの裁判例紹介だが、これが最後になるかもしれない・・・(涙)。


原価セール第二事件の知財高裁判決。
知財高判平成18年2月27日・第2部(中野哲弘裁判長))


この事件は、「原価セール」を行った株式会社ダイコクに対して、
大正製薬株式会社が提訴したのに端を発し、
かれこれ5年近くにわたって争われているものであるが、
裁判所は一貫して、ダイコク側の「原価セール」の正当性を支持している。


大正製薬側が不正競争防止法違反、契約違反、独禁法違反などを主張して、
損害賠償請求、仕入価格の開示差止請求等を行った第一事件では、
地裁(東京地判平成14年2月5日)、高裁(東京高判平成16年9月29日)で
原告側の請求棄却、上告も不受理となった(最決平成17年10月13日)。


今回知財高裁で判決が出た第二事件は、攻守ところを変え、
ダイコク側が取引基本契約上の地位確認と発注商品の引渡しを求めて提訴したもの。


こちらの方も、地裁(東京地判平成16年2月13日)で原告勝訴、
そして本件でも大正製薬側の控訴が退けられたことで、
ダイコクの“5連勝”という結果となった。


価格破壊的な仕掛けによって業界秩序を崩された上に、“名前まで使われた”
大正製薬側の憤りは分からないでもないのだが、
「自由競争原理」が浸透しつつある今日、
価格拘束による市場秩序維持の思惑が透けて見えるような主張が
易々と受け入れられるはずはない。


本来、純粋な競争政策(独禁政策)的見地から争うべき問題にもかかわらず、
第一事件で、あえて本質的な争点ではない「不競法2条1項7号違反」を
持ち出さざるを得なかった時点で、大正製薬側の“苦戦”は予想できたといえる。


本件における自分の関心は、
そんな“傍論的争点”に過ぎない「不正競争防止法2条1項7号」に集中しており、
以下では、この争点に関して4つの判決が示した裁判所の解釈について
検討していく予定なのだが、
裁判所が、主要な争点において「不当廉売にあたらない」という判断を下した以上、
上記“傍論”に対する判断も、
自ずから「結論先にありき」で組み立てられたものになっているのではないか、
という疑念は打ち消すことができないものになっている。


ゆえに、一連の判決における裁判所の2条1項7号に対する判断は、
その点を差し引いた上で読まないと、
この先の流れを見誤ることにもなりかねない、と感じているところである。


(後編につづく)

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