「電気による植物生長方法」事件

知財高判平成18年3月23日(H17(行ケ)第10567号審決取消請求事件)。


原告(個人)は、平成6年1月28日に本件特許を出願したが*1
平成15年9月30日に拒絶査定を受け、
拒絶査定不服審判も不成立審決となったため、提訴したというもの。


この特許の「特許請求の範囲」には、

請求項1 植物と培地間に通電して植物が発電する発電力のパワーアップを図ることを特徴とした電気による植物生長方法
請求項2 培地と培地間に通電して植物の発電力をパワーアップする請求項1の植物生長方法

というシンプルな記載があるのみで、
進歩性欠如(29条2項)という以前に、
そもそも特許たりえるのかどうか相当疑わしいものである。


こんな出願に対しても引例を見つけてくる
特許庁の審査官のご苦労が偲ばれるのだが、
取消訴訟まで提起するという出願人側のこだわりゆえ、
裁判所まで巻き込まれることになってしまった。


原告の主張は、


東洋医学の経絡理論」に基づく植物体の「経穴(ツボ)」概念を持ち出す
独自説を展開して、発明の要旨認定を論難したり、
(「パワーアップ」の解釈と関連するらしい・・・)


引例はトマト、ナス等が対象植物だが、本願発明では植物全般を対象としており、
「発明の対象が異なる」と主張したり、


顕著な作用効果として、
①乾電池1本で松食い虫による松枯れが防げる、
②本願発明によりマツタケが発生した、等と主張したり、


と、なかなかユーモアセンスに富んでいるが、
元々「特許請求の範囲」の記載から読み取るのが困難な事項である以上、
裁判上の主張としては通用しないだろう。


それでも、裁判所(篠原勝美裁判長)は、
「発明の詳細な説明を参酌して、その技術的意義を探究する」という
定石どおりの判決を書いている。
お疲れ様です、と言うほかない。


ちなみに原告は、
特許庁は、審査、審判を含めて、審決に至るまでに12年近くを要している」
と手続上の違法を主張したりもしているが、

「原告は、本件出願から7年後の平成13年1月25日に、手続補正書の提出とともに出願審査の請求をし、拒絶理由通知を受けて、平成15年4月及び同年6月に手続補正書を提出していることが認められるから、失当というほかない。」

(笑)。


まぁ、このような画期的な発明というのは、
得てして世間に理解されるのは時間がかかるものである。


そうそう簡単に第三者が模倣できるとも思えないし、
あえて特許出願して公衆の面前にさらすよりも、
秘伝のノウハウとして秘匿した方が、
発明者にとっても、そして何より、
公共の利益のためにも
良いのではないかと思うのである(笑)。


以上、再開早々ネタ失礼。

*1:特願H6-26067、特開H7-213158

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