言ってみたいセリフ

荒川静香選手が、記者会見で、
マチュアとしての競技生活を引退しプロに転向することを表明した。


たぶん、トリノから日本に帰ってきた時点で、
本人の胸の内はほとんど決まっていたはずだし、
見ている側としても意外感は全くなかったのだが、
おぉ、と思ったのが、記者会見での荒川選手の一言。

「お金を稼ぐためにプロになるわけではない。プロとしての仕事がしたいので、なるんです」*1

元から自身に才能のないことを重々承知している自分にとって、
荒川選手のような“天才肌”の選手は、
羨望の対象ではあっても、共感しうる対象ではない。


だが、「プロになったらいくら稼ぎたいですか?」という俗物的な
記者の質問に対して、毅然として上のセリフで切り返す荒川選手に、
自分は「一流の証」を見る。


マチュアには五輪の金メダル、という名誉はあれど、
競技生活がタダで送れるわけでもなく、
シビアな評価の世界で“一流”を維持し続けることが
容易にできるわけでもなく、
意地悪な見方をすれば、
プロ転向に際しては、表に出てこないところでの算盤勘定が
少なからず働いたのではないか、ということは想像に難くない。


だが、それでも彼女の心の奥底には、
決して偽りではない、上のセリフのような感情がどこかに潜んでいたはずだし、
それが彼女を常に一流のアスリートたらしめた
“向上心”の源泉になっていたのではないか、
自分はそう思うのである。


何度も書いているように、
いかに「企業法務戦士」などと気取ってみても、
一総合職社員として会社からサラリーを貰っている限りは、
ただの“アマチュア”に過ぎない。
「プロ転向」の誘惑は、常に自分自身に襲いかかってくる。


上記リンクの記事にある荒川選手のセリフを少し借用して、
企業法務戦士版「プロ転向宣言」がどんなものになるか、やってみよう。

「これからの自分のキャリアについてご報告させていただきたいことがあります。10年課長昇進レース、20年の部長昇進レースを、社員として目指すことはございません。よって本日をもちまして、サラリーマン生活から引退します」。

ダメだ。まったくもって美しくない。
そもそも目標になるべきものが小さすぎる・・・。

「悔いが残ることなく、やっとピリオドが打てた。新しい道へ出発できることをうれしく思う。今は小学1年の入学するようなワクワクする気持ちです」。

いや、そもそも法科大学院とか入ったら、1年生からスタートだから・・・。

「今後は私が企業法務界をサポートする側に回らないといけない。法務担当者から要望があれば、お役に立てることはやっていきたい」。

誰もお前に頼んでねーって・・・*2

「お金を稼ぐためにプロになるわけではない。プロとしての仕事がしたいので、なるんです」

そもそも、お金稼げないでしょ(失笑)。
既に弁護士供給過剰時代は到来してるんだから・・・。



結局「プロ転向宣言」は、
マチュアで頂点を極めた人間が言うからこそ意味をなすのであって、
ピラミッドの底辺にいる人間が言っても何も説得力がない*3
ということになりそうだ。
(当たり前のことを言うな、という突っ込みはご勘弁を。あくまでネタです。)


ただ、最後のセリフを言えるだけの“余裕”は
どこかに持っていたいと思ったりもしている、
今日この頃ではあるのだが・・・。

*1:日刊スポーツニュースサイトより(http://www.nikkansports.com/sports/p-sp-tp0-20060508-29090.html

*2:そもそも企業法務の仕事やるためにプロになろうとは思わないし・・・。

*3:それに、在職中に資格でも取れれば別だが、ローに行くってだけじゃ「プロ転向」宣言じゃなくて、ただの「プロ挑戦」宣言でしかない・・・。

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