『法学教室』2006年5月号

次月号が届いている時期になって書くのもなんだが、
(・・・と言っても別に今に始まった話ではないが)
一応のお約束として軽くご紹介。

法学教室 2006年 05月号 [雑誌]

法学教室 2006年 05月号 [雑誌]


新しい連載シリーズの中で一番期待していた行政法の連載が
2回目にして落ちているのが残念でならないのだが(笑)、
代わりに燦然と輝くのが、
酒巻匡教授の裁判員制度に関する解説&対談*1


このテーマに関しては、
既に様々なところで論評がなされているが、
問題の本質を鋭く指摘しつつ、
これだけコンパクトにまとめられた論稿、というのは、
なかなか見当たらない。


個々の問題について言及するのは筆者の能力を超えるし、
対談も含めて一読していただければ
師の思いは十分に読者に伝わるであろうと思われるが、
酒巻教授が最後に述べられている以下の“警句”をご紹介することで、
本エントリーの締めに代えたいと思う。

「前記のとおり、裁判員の仕事・役割は、「刑事裁判」という極めて重大な作用の一翼を担うものである。・・・(中略)・・・そして、裁判員は、このような重い責任と負担を突如として一方的に負わされることになる。また、このような慎重を要する重い責任を無事果たし終えたとしても、個々の裁判員には特段の利得があるわけではない。」
「筆者は、以上の点をあいまいにするのは良くないと考える。このようなたいへんな負担を一方的に一般国民にお願いすることになる。それを直視した上で、国やとりわけ法律専門家は、全力を挙げて、このような裁判員の負担をできる限り軽減し、そして、責任を持った自由な判断が可能な前提を創り出す必要がある。」
「それだけに関係する法律専門家には、全面的な意識改革と発想の転換が要請されている。これを疎かにして従来の惰性に流れた運用を続ければ、一般国民の一層の注目の下で、裁判員制度は無惨な失敗に終わり、法律専門家に対する信頼は地に堕ちて二度と回復されることはないであろう。専門家の責任は極めて重いのである。」(14-15頁)

*1:酒巻匡「裁判員制度の意義と課題」法教308号10頁(2006年)、酒巻匡=河本雅也「対談・裁判員制度実施に向けた新たな刑事裁判の在り方」法教308号16頁(2006年)。

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