「ローマの休日」騒動

映画「ローマの休日」等の著作権を侵害されたとして、
パラマウント・ピクチャーズが激安DVD業者に対する
製造・販売差止仮処分を申し立てた件。

2004年1月1日施行の改正著作権法で、同日以降の公開作品は著作権保護期間が50年から70年に延長された。2作品は、1953年公開で、文化庁は同年の作品から保護期間を70年としているが、一部の会社は「53年の作品は03年12月31日に50年の保護期間が過ぎた」として安価なDVDを製造販売しているという。(日経新聞2006年5月25日付夕刊・第22面)

1970年現行法(1971年1月1日施行)で
著作権の保護期間が38年から50年に延長された際の取扱いとしては、

「1932年1月1日以降に死亡した著作者については、1971年1月1日の0時には未だ著作権は消滅していないので、現行法が適用される結果、死後50年の保護期間を享受する(以上につき、加戸・逐条講義310〜311頁)」*1

という解釈がなされているが、
その当時、そのような解釈が採られた背景には、
著作権が「有名作家の遺族の経済的利益を守る権利」として
受け止められていた、という事情もあるのではないかと思う。


1960年代初頭から、1970年にかけて、
毎年のように暫定的に存続期間が延長されていく中で、
当時の新聞には、
年末になると、毎年のように有名作家の遺族たちの
“安堵の声”が掲載されている。
(このあたり、一種の政治マターにもなっていたようだ。)


四半世紀が経過し、
「個人(及び遺族)の権利」から、
より商業化された「権利」へと著作権が“進化”を遂げる中で、
そして、著作権者の利益だけでなく、
ユーザー側の利益の重要性についても認識が広がりつつある*2
この時代において、
裁判所が“空白の一日”の取扱いについてどのような判断を見せるか、
というのはひとつ見ものである。


(追記)
ネット上で探していたら、
昨年9月29日の日経産業新聞に、
今回の件を推察させる記事が掲載されていたようで、
当該記事に言及している方もおられる。
http://plaza.rakuten.co.jp/12345678N/diary/200509290001/


ブログに引用されている日経産業の記事によれば、

「一九五三年公開の「ローマの休日」は〇三年十二月三十一日で五十年の保護期間が満了。一見、七十年の保護期間が享受できないようにも見えるが、実は改正法には五三年公開作品については保護期間の延長を認める「特例措置」が盛り込まれていた。」

ということだが、
はて、どこにそんな特例があるのだろう?


映画の著作物の保護期間を延長した、
「平成15年6月18日・法律第85号」の附則は以下のようなものである。

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十六年一月一日から施行する。
(映画の著作物の保護期間についての経過措置)
第二条 改正後の著作権法(次条において「新法」という。)第五十四条第一項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による。
第三条 著作権法の施行前に創作された映画の著作物であって、同法附則第七条の規定によりなお従前の例によることとされるものの著作権の存続期間は、旧著作権法(明治三十二年法律第三十九号)による著作権の存続期間の満了する日が新法第五十四条第一項の規定による期間の満了する日後の日であるときは、同項の規定にかかわらず、旧著作権法による著作権の存続期間の満了する日までの間とする。

上記第二条をもって「特例措置」というのであれば、
結局のところ、「24時」と「午前0時」の解釈に行き着かざるを得ず、
実のところ何の解決にもなっていないように思われるのであるが、
気のせいだろうか。


ちなみに、国会議事録を検索しても、この件に関しては何らヒントは得られない。


審議会議事録は・・・?
さすがにそこまでは見ていない・・・*3

*1:田村善之『著作権法概説〔第2版〕』289頁(2001年)

*2:といっても、極めて限られた範囲でしかないのは残念であるが。

*3:根気のある方は調べてくださいまし。

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