看板倒れの法整備?

今朝の日経新聞に、文化審議会法制問題小委が
IPマルチキャスト放送の取扱いに関する
報告書案骨子を発表したとのニュースが*1

「テレビ番組をインターネット配信でも楽しめるように、著作権の扱いを議論していた文化審議会法制問題小委は30日、光ファイバーなどを利用した「IPマルチキャスト放送」で地上波やBSの番組を同時に流す場合に限り、ケーブルテレビと同様に扱い、配信しやすくすることを認める報告書案の骨子を公表した。過去の人気ドラマや邦画の再放送など視聴者の要望の強い分野の結論は先送り。海外で進む「通信と放送の融合」は入り口で足踏みしている」

この問題については、既にご紹介したように、
NBL833号の斎藤浩貴弁護士の論稿が非常に参考になるが*2
やはり、「スケジュール配信」と「オンデマンド配信」とでは
WPPT*3上での扱いに差異がある、という認識のようだ*4


いかに技術が進歩したからといっても、
見たいときにいつでも見たい番組を見る、という
オンデマンド的配信を全番組について自由に行えるようにすることが、
今の世の中にとって必須だとは思えないし、
総務相の“天の声”で拙速に法改正を行うのは
いかがなものか、と思っているので、
落としどころとしてはこんなものだろう、
というのが率直な感想である*5


従来から問題になっていた実演家の保護の点については
有線放送も含めて実演家の報酬請求権を認める、
という改正の方向が示されているようで、
これは非常に大きな変更点であるように思われる*6


このことをどのように評価するかは人それぞれだろうが、
個人的には、著作物の“経済的価値”は、
実演家の寄与によるところが大きい、と考えているだけに、
著作者に劣位する地位に置かれている“実演家”サイドに
利を与える改正は、一定程度評価されて良いのではないかと思う。

*1:日経新聞2006年5月31日付朝刊第3面。

*2:斎藤浩貴「通信を利用した放送と著作権法上の課題」NBL833号27頁。

*3:「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」。

*4:上記記事中の甲野正道著作権課長コメント参照。

*5:もっとも、一次資料にあたっていないので、これが正しい理解かどうかは分からないが。

*6:斎藤弁護士の論稿にもあるように、現在は「5団体契約」に基づいて、CATV事業者から芸団協に補償金が支払われているから、実質的な改正ではない、という見解もあろうが(斎藤・前掲33頁)、やはり法的に報酬請求権が明記されることの意味は大きい。

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