なぜ、今、オシムなのか。

スポーツ紙の社交辞令かと思っていたら、
結構確実なソースから出ていた情報だったらしい。

「サッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会一次リーグで敗退した日本代表の次期監督に、Jリーグ1部(J1)ジェフ千葉監督のイビチャ・オシム氏(65)が就任する方向であることが24日、分かった。W杯から帰国した日本サッカー協会川淵三郎会長が記者会見で、オシム氏に絞って交渉していることを明らかにした。」(日経新聞2006年6月25日付け朝刊第34面)

以前から、熱心なJサポからは“オシム待望論”なるものが
沸き起こっていたし、
記事によると、川淵会長自体、

「昨年のW杯予選で、もし日本がバンコク北朝鮮に負けていたら、ジーコ監督を解任し、オシム監督に後を託す腹案を日本サッカー協会川淵三郎会長は持っていた。」*1

だから、今回の報道は“既定路線”に沿ったもののようにも
思われる。


だが、なぜ、次のワールドカップまであと4年ある「今」なのか、
今回の選択にはかなりの疑問がある。


自分自身長年のジェフサポだし、
それゆえ、

「強豪でない千葉をあれだけ魅力あるチームにした。選手の判断力を高める練習を中心にしており、ジーコの考えを継いでやるのにふさわしい」

という川淵会長の言葉の意味が痛いほど分かるのも
事実である*2
(ただ「ジーコの考えを継いで」というくだりはオシムに失礼)


だが、オシム監督は現在65歳。
4年後は69歳である。


仮に4年間“オシム・ジャパン”が継続したとすれば、
今大会“老将”として注目されている
ブリュックナーチェコ)やアラゴネス(スペイン)より
年季の入った状態で本番を迎えることになる。


もちろん監督業は、歳を食っているからダメ、
という職業ではないだろうし、
凡庸なコメントしかなかった前任者に比べれば、
毎試合、試合後の“オシム語録”が聞けるのは有難いことだ。


だが、昨夏の時点で、“腹案”が存在したのであれば、
なぜもっと早いうちに手を打っておかなかったのか?


前任者の持つ“土壇場での強運”(それゆえに神様(笑))が、
協会の判断を誤らせた一因ともいえるだろうが、
日本がワールドカップに出られる機会なんて、
今後そうそうあるものではない。


選手育成・指導力もさることながら、
采配の妙にも定評のあるオシム監督を、
今年の頭から投入していれば、
方向性の見えない親善試合を繰り返すこともなかっただろうし、
グループリーグももう少しまともな戦いができたことだろう。


ジェフにオシム色が浸透したのは、
プロのクラブゆえの“濃密な時間”あってこそであるが、
代表チームの監督にはそこまでの時間は与えられない。


今大会に出場した日本代表チームにとって
もっとも“濃密な時間”は、
本大会直前の一時期だけだったようにも思われるだけに、
惜しい機会を逃した。
そういわざるを得ない状況がそこにはある。


オシム監督に代表監督就任の話を向けると、
常に「自分はもう年をとりすぎている」と切り返される、
というのは有名な話だが、
昨シーズンでの勇退確実と言われたオシム監督が千葉に残留した裏には、
代表監督就任に向けての“布石”もあったように思われ、
条件面でこじれなければ、
今回の報道どおりの結末となる可能性は高いだろう。


阿部勇樹が10番を付け、巻がゴール前で躍動し、
羽生、山岸あたりが所狭しとフィールドを駆け回る代表チームも
悪くはない*3


だが、素人目には決して面白くはないオシムのサッカーが
どこまでメディア受けするのか、といった不確定要素も多いだけに、
手放しで喜べる、と言う話でもない*4


本大会で勝てるかどうか、という尺度を
見る側が忘却しない保証はどこにもない。


サラ金のCMにまで出演した国民的神様に比べれば、
知名度は決して高いとはいえないオシム監督の“JAPAN”*5


ノド元過ぎれば熱さを忘れ、
数字狙いのメディアやスポンサーは華のある“スター”を望むだろう。


ゆえに、地味な仕事師たちで固めた(たぶんそうなる。)
オシムのチームは、どんな些細な試合でも結果を出すことが
至上命題になってしまう。


それゆえに、悩ましいのである・・・*6

*1:事実、昨年の夏には、ジーコ解任、後任オシム、という記事が新聞紙上に躍っていた。

*2:過去のオシム礼賛エントリー(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20051105/1131208951)も参照。語録サイトリンク付き。

*3:そこまで大胆にメンバーを入れ替えないと“オシムサッカー”の色は出せない。

*4:少なくとも「黄金の中盤」などと言う幻想はもはや見ることができない。

*5:これは国内に限らず、海外でも同じようなものだろう。代表監督経験はユーゴスラビアだけ。指揮をとったクラブも中小のクラブが多い。いくらしっかりとした哲学に基づいて采配を奮い、堅実な成績を残していても、一時代を築いた“スター”に比べると見劣りして映ってしまう(それゆえ批判にさらされる機会も多くなる)のは、古今東西、どこの国でも変わらないように思われる。

*6:もちろん、ジェフがエレベーターチームに逆戻りしそうな恐怖感が、自分を手放しで喜ばせてくれない一因であるのは確かなのだが・・・。