判決は“消された”のか?

大塚先生のブログなどで取り上げられている、「消された判決」の謎*1


実は、筆者は以前、当該判決(東京地判平成18年4月27日)に軽くコメントしたことがある。*2


この事件、提訴から判決まで3年もの長い月日を経ていることもあって、事実関係に関する主張が相当分厚いものになっているので、コンサルティング業界における従業者の独立・転職に伴う元雇用主とのトラブルの1ケースとして、事例的には興味深いものがあったのだが、その一方で、当時も指摘したとおり、著作権侵害を判断する上での裁判所の職務著作の成否判断(特に公表名義要件の該当性判断)にいくつかの疑問があるものでもあった。


また、本判決は第1事件(H15(ワ)第12130号)と第2事件(反訴・H15(ワ)第11159号)の双方に対して下されたものであるが、第1事件の後半部分と第2事件で争点になっているのは、取締役としての競業避止義務違反や報酬減額の可否、であって、純粋な意味での知財事件、というわけでもない。


それゆえ、個人的には当事者の要請というより、裁判所の自主的判断で削除したのかなぁ(笑)と思ったりもしたのであるが、果たして真相はどうなのだろう。


なお、自分が良く使っている判例データベースにも当該判決は掲載されていなかった(通常であれば最高裁HPにアップされた判決は全て掲載されているはずなのに)ので、このあたりに“当事者からの働きかけ”の影を見ることもできるのだが、もともとこの判決がアップされたのは判決が出てから暫く経ってからだったから*3、単にデータベース管理者が拾い忘れただけ、という可能性もある。


もしこれが当事者の“仕業”だったとしたら、判決の中で、原告テキストの不競法上の「営業秘密」該当性が明確に否定されている以上、あまり感心できる態度ではないのであるが、かといって、訴訟の場における主張立証活動に支障をきたさない、という観点からは、“さらされる”側の利益にも一定の配慮をする必要があることは否めない。


いずれにせよ、難しい問題だ・・・。

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