実務と学問の狭間

実務にかかりっきりになっていると、どうしても目の前にぶらさがった特許庁の審査基準だとか類似群のコード表だとかで頭の中が一杯になってしまうのであるが、冷静に考えれば、商標法の条文の中には、総合小売だの単品小売だの、といった細々とした“区別”は全く明記されていないわけだし、3条1項柱書きには、小売業者自身が使わないといけないなんてことは一言たりとも書いてないんだよな・・・と、当たり前のことを当たり前のように感じ入った次第。


もっとも、「審査基準」の存在を捨象した“まっさらな”解釈論で助言してくれるような弁理士の先生がクライアントの信頼を直ちに勝ち取れるか、と言えばそれは別問題だし*1、最終判断権を持っている企業サイドでも(確実に予想される)審判、取消訴訟等のコストを度外視して、独自の信念を貫こうとするのであれば、無謀とのそしりは免れ得ないだろう。「実務と理論の架橋」と言葉でいうのはたやすいが、実際に橋をかけるのは決して易しいことではない*2


まぁ、しがない実務サイドの人間としては、限界事例を少しずつ拾い上げていってその積み重ねで狭間を埋めていくほかないし、それができるところに実務の面白さと実務者の存在意義があると思っているので、あとは気力の続く限り(&時間と予算が使える限り)、チャレンジしてみようか、という気分でいるのではあるが・・・。


今は、想像するだけでも怖い1ヵ月後の仕事の山の中で、気力が萎えていないことをただただ願うのみである(苦笑)。

*1:弁護士の先生に商標関係の相談ごとを持っていくと、“類似群コード”なんぞをすっ飛ばした豪快な見解をいただけることも時々あったりするのだが、結局、「心配だから弁理士の先生の見解の方に従っておこう」となるのがいつものパターンだったりもする。

*2:実務が行き当たりばったりでやっている中で理論構築を図る、という場合ならまだしも、一定の法則に則って確立した実務運用が動きはじめているさなかに、理論主導の再編成を図ることを試みるには相当のエネルギーが必要だろう。

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