ガス機器事故をめぐる情報開示に潜む問題

パロマリンナイと「事故」が続出したのを受け、ついにここまで来たか、というニュース*1

経済産業省が13日発表したガス機器の不完全燃焼による一酸化炭素(CO)中毒事故の集計結果で、死者数は最多のパロマ工業名古屋市)製など上位5社で3分の2を占めたことがわかった。死亡事故多発の背景には、換気不足など「誤使用」を理由に公表に後ろ向きだったメーカーや行政の安全認識に対する甘さがある。広範囲な事故情報の迅速な公開など制度が改められる中、誤使用による事故の防止対策が今後の課題になる。」(2007年3月14日付け第3面)

記事では、

「「使用法の問題」として積極的に事故情報を公表してこなかった」

ことが、「メーカーや行政の対応の甘さ」であると断罪されているが、果たしてそうなのだろうか?


「誤使用」に伴う事故というのは、いわば被害者による自損事故のようなもの。仮にこれが電気製品ではなくクルマの話だったとしたら、「ブレーキとアクセル踏み間違えて路肩に転落」しようが、「酒に酔ってハンドル切り損ねて電柱に衝突」しようが、本人の非が責められることはあっても、メーカーの責任が追及される話にはならないだろう。


また、今回槍玉に挙がっている「上位5社」が、この分野でどの程度のシェアを占めていた会社なのかは分からないが、おそらく市場に出荷された製品の総数に比べれば、報告された事故件数自体は相当少ないはず*2


パロマの事故件数がいかに多いといっても、それは同社の製品自体が広く家庭に普及していたということの裏返しに過ぎず、松下、リンナイといった他の有力メーカーの製品でも同様の事故が起きていたことを考えると、これをメーカーの責任として捉えるのが適切なのかどうか、疑問が残るのは確かである。


警察が交通事故防止に向けて、広範な啓発活動を行っていることとの対比で考えるならば、「誤使用」を防止するための努力は一次的には行政の側で行うべき、という話は一応成り立つのかもしれないし、そのために必要な情報を会社側が出さなかったために行政の側で必要な措置をとれなかった、ということであれば、メーカーが責任の一端を担う、といっても言いすぎではないのかもしれないが、今回のケースではそもそも報告が求められていなかった事項が後々になって問題とされているわけだから、やはりメーカーまで“巻き添え”にするのはおかしい、といわざるを得ない。


事故を起こした製品、そしてその製造メーカーを叩くのは簡単。だが、物憂げな人々の気晴らしのために、特定企業をスケープゴートにした“バッシング”を行ったとしても、事故が減るわけではないし*3、「拡大した結果責任」を追及することで、企業側に、より便利な、新しい製品を開発する意欲が失われてしまえば、そのツケは結局我々自身に回ってくることになる。


今回の「公表」そのものが、政策的に完全な誤りだ、とまで言うつもりはないが、メディア等での取り上げられ方、そしてそれに対する人々の受け止め方を見ると、やはり少なからぬ違和感を抱かざるを得ないのである・・・。

*1:経済産業省のプレスリリースの原文はhttp://www.meti.go.jp/press/20070313002/20070313002.html

*2:その意味で、事故件数だけの“ランキング”を並べる今回の結果公表方法には少なからず疑念がある。

*3:そういった“社会的制裁”の存在ゆえ、メーカーの側でも積極的な情報公開を躊躇ってきただろうであることは、容易に想像が付く。

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