奇跡を信じるな。

これは“奇跡の優勝”への第一歩なんだよきっと、と、3回転コンビネーションがすっぽ抜けた瞬間、自分を慰めた浅田真央ファンの悲痛な胸中如何ばかりか・・・(苦笑)。


母国開催だから、といって、メディアが思い浮かべたようなサクセスストーリーが綺麗に描けるわけじゃない、というのがスポーツの面白いところなのは確かなのだが、それにしても、勝負の世界というのは残酷なものだ、とつくづく思う。


本人がいかに「緊張してなかった」つもりでも、独特の“ムード”というものは自然と人を飲み込んでしまうもので、ジャンプの失敗以上に、最後の方の雑な演技が目立ってしまったあたりを見ると、当の本人は、地に足が付く前に3分間が終わってしまったような気分なんじゃないか、と思ったりもするわけで。


実際、SPで上位にいる選手を見ると、地元・トリノで母国の重圧に潰されたコストナー選手(3位)に、同じく五輪で遠く離れた母国の期待に潰された安藤美姫選手(2位)と、同じようなプレッシャーにさらされ続けた選手2名。


初出場のキム・ユナ選手にしたって、母国のただ一人のスタースケーターとして、世界ジュニア優勝以降、壮絶なプレッシャーに晒されてきたというのは想像に難くない*1


長年世界で日本女子の牙城を守り続けてきた村主章枝荒川静香両選手の偉大さを、改めて思い知らされた方も多かったのではないだろうか・・・。


さて、明日は、本人も、そして代々木のスタンドで見守る熱いファンの方々も、最後まで“奇跡”を信じてやまないことだろうが、奇跡というのは、予測しない時に起きるから奇跡なのであって、全ての人間が待ち望むような“奇跡”は、決して叶わないただの幻に過ぎない、そう思って眺めていた方が、ずっと優しい気持ちになれるはず。


若さと勢いだけで勝ち進んで後々落とし穴に嵌るより、今躓いておいた方が、後々良いこともある、と、無条件にそう思えてしまう自分は、いささか年を取りすぎてしまったのかもしれないけれど(苦笑)、それでも、ブラウン管の向こうのキム・ユナ選手の転倒を願って待つよりは、心穏やかに、淡々と美しき饗宴を眺める途を選ぶほうが健全だ、と信じてやまない・・・*2

*1:ここで優勝しようものなら、次の五輪までの間、かつての我が国の伊藤みどり選手すら遠く及ばないような苛烈なプレッシャーをさらに味わい続けることになるのだろうが・・・。

*2:現実的な願望として表彰台の真ん中に立ってほしい選手はキミ・マイズナー。他に望むとしたら、中野友加里選手の8位入賞と、SPでは見ることができなかったゲデバニシビリ(笑)の演技をテレビで見ることくらいか。歩いてでも行けそうな試合会場で演技が行われているのに、地球の反対側の国の中の人と同じように、ただテレビで眺めることしかできない、というのは悔しいものではあるのだが、こんな時はダフ屋もお手上げ、というのは去年の時点で学習済み・・・。

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