在宅勤務と職務発明・職務著作

遅まきながら、この国でもようやく新しい働き方を導入する動きが出てきたらしい。

松下電器産業は4月1日から、国内最大規模となる約3万人を対象に在宅勤務制度を導入する。システム技術者だけでなく営業、企画、人事などホワイトカラーのほぼ全社員が利用できるようになる。育児や介護などで通常勤務が難しい社員にも仕事を継続できる環境を提供し、少子高齢化に対応した人材確保策の目玉とする。」(日経新聞2007年3月28日付朝刊・第1面)

在宅勤務が認められるのは、「平均で週に1日か2日程度」ということだから、まだまだ限定的なものに過ぎないが、それでも無意味にオフィスに貼り付けにされて仕事効率を落としているこの国のホワイトカラー、特に頭脳職ホワイトカラーにとっては朗報なのは間違いない。


で、個人的に気になったのは、仮にこのような在宅勤務が一般的になった場合(それも在宅勤務がデフォルト、といった状況になった場合)、これまでの職務発明や職務著作をめぐる要件論の下で、不都合が生じる可能性はないか、ということである。


職務発明に関しては、従業者の職務に属する発明である限り、いかなる勤務態様で生み出された発明であっても、一応は特許を受ける権利が使用者に帰属することになるから(当然、勤務規則中に承継条項がある子とが前提だが)、あとは対価算定の場面で従業者側に若干有利な状況が生じるくらいで、そんなに極端な帰結にはならないと思われる*1


だが、職務著作の場合は、「法人の発意」の要件をどれだけ重くみるかで、権利が使用者・従業者のいずれに帰属するかが変わってくる可能性がある。


「発意」要件を事実上、「職務上作成」の要件に吸収させてしまう解釈であれば、裁量性の大きい在宅勤務であっても、通常のデスクワークで作成された場合と同様の帰結になるだろうが、「発意」要件そのものに重大な意義を持たせるのであれば*2、上司が逐一部下の職務内容をコントロールできない在宅勤務のような形態で職務著作物が作成された場合、「発意」要件を充足しない、として職務著作該当性が否定されることもないとはいえない。


まぁ、職場で顔を付き合わせながら仕事をしていても、部下の仕事の中身になんて全く無頓着な管理職はたくさんいるわけで、これは在宅勤務かどうかに限らず、ホワイトカラーの仕事のやり方そのものに起因する問題なのかもしれないが、将来的に疑義を生じさせないためには、やはり社内規程なり契約なりで、その点フォローしておく必要があるのではないか、と思った次第である。

*1:そもそも実験設備等を用いる必要があるような場合には、在宅勤務という形態はとりにくいし、自宅で研究を行っていたとしても、業務に必要なインフラ等をあらかじめ会社側で整えているのであれば、それを踏まえた上で発明に対する会社の貢献度の数字も弾き出されることになるだろうから、従来の認定から大きく外れるとは考えにくい。

*2:現在ではこのような解釈は少数説の部類に属するだろうが。

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