ビバ、小売商標祭!

過日のエントリーでもチクッと触れたが、特許庁が3月28日付で発表した「商標審査便覧」の改正*1


何が凄いって、制度導入開始4日前である。


確かに書かれていることの多くは、これまでの説明会等でも言われていたことだし、仮に新しい情報が含まれていたとしても、6月30日の特例出願期間までに対応すれば問題はない、といった性質の記述も多い。


だが、「28.04 使用に基づく特例の適用の主張とその要件(附則第8条第1項及び第2項関係)について」*2では、「使用特例商標出願」として認められるための条件が細かく記載されており、例えば、

イ.出願商標と使用商標が同一の商標ということができるかどうかについては、商標審査基準(第2 第3条第2項(使用による識別性)2.(2)、(3))によることとする。
なお、商標が同一という場合には、その色彩も同一でなければならないが、例外として使用されている商標が文字と色彩(単一のものに限る。)との組合せであるときは、色彩以外は同一であることを条件に、出願商標が黒色で文字を表したものであるとき(標準文字を含む。)は同一の商標と認めるものとする。
ウ. また、証明書類には、複数の商標が表示されている場合において、その中の一の商標を構成・態様を変更することなく出願商標としている場合は、同一と認めるものとする。(太字筆者)

「なお、使用役務の立証は、その小売等役務において取り扱う商標法施行規則別表の最も細分化された小売等役務の表示を基準に判断する。商標法施行規則別表中、飲食料品の小売等役務のように包括的な表示(小売等役務として包括的という意味である。)がされているものについては、使用役務の業種、業態等がわかる売り場の状況等も含めて、小売業等の業種や業態を特定し得る程度に取扱商品の範囲がわかるよう、極力広範に明らかにした上で(商品の類似群単位で取扱商品の範囲が立証されていることが望ましい。)、商標の使用をしていることを立証する必要がある。その包括的な表示に含まれる個別の一部の小売等役務についての商標の使用を立証しただけにとどまり、指定した小売等役務に係る業種や業態に合致する小売・卸売業とまでは認められないような場合(例えば、飲食料品の小売等役務を指定しているが、証明書によっては、例えば食品総合スーパーなどとは認められない場合。)は、飲食料品の小売について商標の使用をしたことが立証されたものとは認められない。(太字筆者)

といった内容が含まれているし、証明に使いうるものの例示も

① 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(商標法第2条第3項第3号及び第4号)
小売等役務についての「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)」としては、例えば、「店舗内の各階の売り場の案内板」、「販売コーナーを示す看板」、「ショッピングカート」、「買い物かご」、「陳列棚」、「ショーケース」、「接客する店員の制服・制帽・名札」、「試着室」、「商品カタログ(通信販売)」、「販売商品」、「販売商品の包装」、「包装紙」、「買物袋」等が考えられる。
② 役務の提供の用に供する物(商標法第2条第3項第5号)
小売等役務についての「役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。)」(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物については①を参照)としては、例えば、「店頭に展示された商品の見本」、「商品の会計用のレジスター」等が考えられる。
③ 電磁的方法による映像面(商標法第2条第3項第7号)
小売等役務についての「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により行う映像面を介した役務の提供」における映像面としては、例えば、インターネットを利用した通信販売において、そのサイトを表示している「顧客の操作するコンピュータのディスプレイ画面」等が考えられる。
④ 役務に関する広告、価格表若しくは取引書類又はこれらを内容とする情報(商標法第2条第3項第8号)
小売等役務に関する「広告、価格表若しくは取引書類」としては、例えば、「電車内の吊り広告」、「新聞広告」、「新聞折り込みチラシ」、「商品カタログ」等が考えられ、また、これらを内容とする情報としては、例えば、インターネットサイト上で商品の広告を内容とする情報を表示する際に、商標を表示する「顧客の操作するコンピュータのディスプレイ画面」等が考えられる。

と説明会のときよりも詳細に挙げられているのだが、これらはあくまで2007年3月31日までに使用された証拠でなければならない。


特許庁は、

使用している本人がそれを証明するカタログ等の書類を用意することは比較的容易なことであるため、証明するために必要な書類を商標法第8条第4項の協議命令において指定された期間内に限定している」

というが、どんな大規模小売業者でも、自社で取り扱っている全商品が掲載されたカタログなど、そうそう持っているものではないだろうし、その場合、写真撮影等で補充しなければならないだろうに、「何を用意しておけば良いか」の指針となる上記便覧が31日の3日前に公表された、というのでは、如何ともし難いことも出てくるだろう。


また、使用特例でもそうだし(「28.07」)、「41.100.03 商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について」でも出てくるのだが、従来「通常使用権者による使用」も含まれる、と予想されていた、「自己の業務に係る役務の使用」の範囲が、

(1)出願人との関係が会社法上の子会社である場合
会社法(平成十七年法律第八十六号)上の子会社とは、会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。(会社法第2条第1項第3号)。
(2)出願人との関係が会社法の子会社であるとの要件を満たさないが①資本提携の関係があり、かつ、②その会社の事業活動が事実上出願人の支配下にある場合
(3)出願人との関係が団体の構成員である場合
団体がその構成員に使用させる商標を出願する場合においては、構成員の業務を、出願人である団体の「自己の業務」とみることができる。
(4)出願人との関係が加盟店である場合
フランチャイズ契約に基づき加盟店であるフランチャイジーが行う業務を出願人であるフランチャイザーの「自己の業務」とみることができる。

の4つに矮小化されてしまったのもいただけない。


確かに従来の解釈からすれば、赤の他人である通常使用権者の使用をもって「自己の使用」というのは苦しかったのであるが、そうであれば、もっと早くその旨を明らかにしておくべきだったのではないか。


また、(1)〜(3)はともかく、(4)でいうフランチャイジーを他の商標使用権者と区別する合理的な意義があるのかどうかについては、疑問もあるところである。


なお、評判の悪かった「特定小売等役務」における「2以上の区分を指定すれば拒絶理由通知」の運用予告だが、抵抗むなしく

「(c)類似の関係にない複数の小売等役務を指定してきた場合」

は原則として拒絶理由通知の対象となることになってしまった(41.100.03)。

「類似商品・役務審査基準」は、各事業者を業態に応じて分類している日本標準産業分類に応じて類似の小売等役務の範囲を定めているところであり、複数の類似群にわたる異なる小売等役務を同一事業者が普通に行っているとはいうことができないと考えられる。このため、同一の事業者によって、類似する小売等役務の分野を超えて複数の類似群に属する小売等役務を指定してきた場合は、合理的疑義があるともいえるから、その指定役務に係る業務の確認を行うこととしたものである。」(太字筆者)

とは、よく言ったものだと思う。


「総合小売等役務」が原則「百貨店、総合スーパー、総合商社」しか相手にしないものになってしまった以上、コンビニエンスストアをはじめとする多くの小売業者は特定小売等役務の確保に走るしかないのであるが、それすら、面倒な使用証明手続なしには認めない、というのであるから、これはほとんど嫌がらせに近い。


商品及びその他の役務についても、

「1.1区分内において、8以上の類似群コード(以下「類似群」という。)にわたる商品又は役務を指定している場合には、原則として、商品又は役務の指定が広範な範囲に及んでいるものとして、商標の使用又は使用の意思の確認を行う。」

というのだから、今後商標権を取得するのは大変な労苦になることだろう。


そして何よりも、本来の3条1項柱書審査強化の趣旨には必ずしもそぐわない、形式的基準による審査を原則として掲げているところに、筆者としては大いに疑問を抱かざるを得ないのである。


いずれにせよ、これから夏にかけて本格的に盛り上がってくる「小売商標祭り」。些細な情報に振り回される日々が続くかと思うと、またなんとも憂鬱である。


こうなったらいっそのこと、祭りの神輿に乗って、審判→取消訴訟まで行ってやろうか、というノリにもなりかけているのだが、この貧弱な体制でそんなことをやっても、結局は自分で自分の首を締めるだけか、と思うとなんとも空しく思えてならない・・・。