量販店は優越的地位にあるのか?

先日ヤマダ電機に入った立ち入り検査が利いたのか、ヨドバシカメラがメーカー派遣従業員の受け入れ態勢見直しを決めたそうである。

「大手家電量販店が店頭で働くメーカーからの派遣従業員「ヘルパー」の受け入れ体制を見直し始めた。ヨドバシカメラは今後2年でヘルパーを全廃し、正社員に切り替える。他社でも費用の一部負担などの検討が始まった。メーカーへのヘルパー派遣強要の疑いで、公正取引委員会が最大手のヤマダ電機を立ち入り検査したことを受け、ヨドバシはメーカーとの不透明な商慣習を見直す。」(2007年5月20日付朝刊・第1面)

1960年代から続いている古い商慣習の見直し、ということで画期的なことであるのは間違いないのだろうが、問題はその理由付けにある。

ヨドバシカメラが「ヘルパー」の全廃を決めたのは、公正取引委員会が大手家電量販店によるメーカーへの従業員派遣の要請を「優越的地位の乱用」にあたる可能性があるとして問題視しているためだ」(同第5面)

確かに、“町の電気屋さん”が廃れつつある今、大手量販店における売場スペースの大小が各種電気製品の売上を左右するのは事実だろうし、それゆえ、メーカーとしては、量販店側からの有形無形の“圧力”(特に「まず価格ありき」の値下げ圧力は相当激しいと聞く)を受けているのも確かなのだろう。


だが、かたや百年規模の歴史を持つメーカーと、ポッと出の家電量販店とでは組織としての厚みが違う。


独自のブランド力を持たず、値段の安さとポイントサービスによる囲い込みだけで突き進んでいる家電量販店のビジネスモデルは、ひとたび崩れれば一瞬にして消え去るもろさを抱えている*1


また、仮に量販店が現状のビジネスモデルを維持し続けることができたにしても、メーカー側が世に送り出すキラーコンテンツ一つで立場は逆転しうるのであって、結局のところ量販店とメーカーの関係は、どちらかが一方的に優勢、というよりは、「持ちつ持たれつ」と表現した方が適切なのではないかと思う。


どんなにデカイ量販店といえど、所詮は「単品小売業者」でしかないのであって、有力な商品を店頭に置けなければ、量販店間の競争には太刀打ちできない。


となれば、少なくとも、大手スーパー・百貨店と納入元との関係よりは、両者の関係はフラットなもの、と考えるのが妥当だろう。


そう考えてくると、「ヘルパー」派遣の慣習を一概に「優越的地位の乱用」と捉えるのが適切かどうか、もう少し議論する余地はある、というべきではないだろうか。


とかく自らの決めたルールを露骨に振りかざす傾向にある最近の公取委であるが*2、家電メーカーから業界挙げての苦情が出ている状況ならともかく、独自の解釈で「独禁法違反の疑いあり」と決め付けるのは、徒に世を混乱させる元になるように思えてならない・・・。

*1:値段が少々高かろうが、モノがよければソニーパナソニックの製品に手を伸ばす消費者は少なからずいるが、隣の店より高い値段でしか商品を売れない家電量販店に足を運ぶ消費者は皆無といってよいであろう。

*2:これは公取委に限らず、今まで陰の薄かった法執行行政機関全般に共通する傾向である。

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