「持ち込み何でも可」の試験で簡単に単位が来るとは限らない。

学生時代、「何でも持ち込み可」ってタイプの試験が苦手だった。


授業に全く出てなくてノートさえ入手できなかった科目はともかく、“講義のコピー”としては完璧なシケプリと十分な資料を手元に置きつつも、情報がうまく整理ないまま沈没した、という経験は数知れない。


試験なんてものは所詮相対評価なわけだから、一見楽勝のように見える「持ち込み可」の試験でも、答案作成の時点で書き負ければ当然低い評価しか与えられないことになる。一定以上の水準の人間が受験する試験で、皆同等の武器を持って戦い、優劣を付ける以上、ちょっとしたミスが命取りになるのも必然のこと*1


何でこんなことを書いたか、といえば、巷で「旧」と張り合っている某試験に対する評価の中に、的を外したものがあまりに多いように見受けられたからで、「特に問題文に論点が書いてあるから誰でも解ける」的な論調には、ちょっと首を傾げざるを得ないな、と思わずにはいられなかったからである・・・。


制度の過渡期特有の「新」と「旧」の争いは、「旧」がこの世から姿を消した後も暫くは続くのだろうが、「狭き門」だろうが「広き門」だろうが、一定の関門を潜り抜けてきた人々には、やはりしかるべき敬意を払うのが人として当然のことであろう。


どんなに狭き門でも容易く受かる人間は受かるし、どんなに広き門でも落ちるヤツは落ちる。そして何よりも、「広き易き門」が本当に見かけどおりの門なのかどうかは、くぐった者にしか分からないはずなのだ・・・。



・・・といった、グダグダな戯言はさておき、今年も新司法試験で出題された知的財産法の問題をちょっとだけ眺めてみた。
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h19-19-07jisshi.pdf、15-17頁)

第1問

「符号化データの蓄積・転送装置に関する発明」の特許権侵害が問題になった第1問。


小問1は、「甲の乙に対する訴訟上の請求として考えられるものについて論ぜよ」ということで、差止請求権、損害賠償請求権と並べて、補償金支払請求権(特65条1項)について触れておけばよいだろうか。


小問2は、「乙が甲の請求に対して主張することができる抗弁を検討」した上で、甲の請求が認められる範囲について論じるものだが、ここでは甲(原告)の出願日、乙(被告)の製造販売開始日、訴外Aの研究成果発表日の先後に留意しつつ、先使用による通常実施権の有無(特79条)、研究成果の発表による新規性喪失等を検討していくことになろう。


侵害が問題となっている携帯電話βは、甲の特許出願前から製造されていた携帯電話αの改良品であること、出願の時点で携帯電話βは設計図面のみ存在したこと、などを「特許出願の際現に」「事業の準備をしている者」といった要件の元でどう処理してくか、という点が一つのポイントになりそうである。


第2問

甲が執筆した小説、それを脚色した脚本(しかも共同著作)、そして甲の小説をモデルにした丁の小説とその続編の小説、と多彩な登場人物のおかげで、相変わらず多くの論点を含むことになったこの問題。


もっとも、演劇化した作品のDVD販売、無料朗読会での朗読、そしてホームページへの掲載、と、論点自体は条文からシンプルに回答できるものが揃った感があるのも確かで、昨年の問題に比べると若干嫌らしさは減ったような気がする。


それゆえ、差が付くとしたら「翻案」の意義にどれだけ思いを馳せて答案作成に向き合うか、といったところになるのではないかと思う。


いずれにせよ、筆者は問題文を眺めるだけの存在。


詳細については当然ながら、他の専門家の皆様方の解説に委ねたいと思う・・・。

*1:逆に、ガチンコの試験で、誰もが面食らうような論点で争う場合には、皆出来が悪い分、ちょっとしたセンスを見せれば、バンと跳ね上がった評価を受けることができる。筆者は地道な努力が大嫌いな山師ゆえ、得意だったのは当然こちらの方だった(苦笑)。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html