新刊書籍紹介

買ったところで読む暇があるのかどうか疑わしい今日この頃だが、それでも法律書コーナーの前で、ふと手が伸びてしまったこの本。

新商標法の論点

新商標法の論点


第二東京弁護士会知的財産権法研究会、といえばこれまでにも何冊か本を出しているのだが、今回は商標法をテーマに扱っている、ということで、やはり惹かれるものがあって、思わず買ってしまった。


(他の知財法領域とは異なり)商標法の場合、論点になりうるところがある程度限られていることもあって、全10回であっても、商標法の保護法益論から、類否判断、効力、そして手続論や応用編としての並行輸入関税法実務の話まで、満遍なく収められている、という点で満足度は高い。


また内容も研究会での発表(講演)の集大成という形式になっているので、最低限必要な情報を押さえながら、さほど抵抗感なく手軽に読める、という点も魅力的である。


ちなみに、ピンで所収されている講演録は、どれも著名な先生方のもので、非常に読み応えがあるのだが、中でも、いくつかの事例を例に取りながら商標法の各機能について分析されている*1、北大・田村善之教授の「商標法の保護法益」(53頁)が、一番の「看板」論稿といえるのではなかろうか*2


また、実務的に興味深いのが、伊藤真弁護士の「関税法の実務」(365頁)、青木博通弁理士*3の「インターネットと商標権の侵害」(323頁)といったところ。


いずれの先生方も実際に講演や研修等でお話を伺うと、もっと奥の深いお話が聞ける方々だし、掲載されている青木先生の論稿の内容などは、実際に聞いたこともあるお話なので、いずれも「圧縮されすぎていて物足りない」という印象はあるのだが、僅か3,800円でさわりだけでも味わえるのだから、贅沢を言ってはバチがあたるというものだろう。


繰り返しになるが、時間のないこんな時には、電車の中で読めるこの手軽さが、何よりも有難いのである・・・。


なお、合わせて買ったのが、以前ご紹介したエンタテインメント契約法の改訂版。


あと、別冊NBLから電子商取引準則の最新版も出されていたのだが、これ以上商事法務に貢ぎたくなかったので、さすがに今回は控えた(笑)。まだAmazonでは買えないようなので、またの機会にご紹介することにしたい。

*1:特に「品質保証機能」に懐疑的な姿勢から諸々のコメントを加えられている。

*2:「講演録」という性質上、あくまで問題意識のさわりだけ、といった感はあるが、それゆえ更なる想像力をかきたてるのは確かだし、少ない紙幅の中で、各判決に対する鋭い分析を披露されているのも、いつもながらに感服せざるを得ない。あえて難を挙げるとすれば、95頁にある先生の肩書が「法学」ならぬ、「邦楽研究科」になっていることだろうか(笑)(実にありがちな誤植。もちろん、これが先生の責めに帰すべき事象ではない、というのは言うまでもないことである)。

*3:青木先生の単著は、以前本ブログでもご紹介した。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html