行動しない株主

週が明ければ、月末に向けて株主総会の季節が始まる。


会社法施行に伴って、総会招集の際の添付書類に記載される事項は大きく様変わりしたが、実質的にやっていることは変わらない。


そして、相変わらず、小刻みに株を持つ筆者の手元には、“所詮1単元”(自虐)の議決権行使書が滞留しているが、自分は今年も足を運ぶ予定はない(大抵の会社は平日開催だし、休み取っていけるほどヒマではないし)


そんな「行動しない株主」にできる唯一の“行動”は、会社側議案にささやかな「否」を投じるくらいか。


たいした理由提示もなく取締役の責任を免除したり、親会社の役員を社外取締役監査役)として連れてきたり、業績がガタガタで株価も崩れているにもかかわらず、役員に退職慰労金を支払ったり、といった会社提案議案には、とりあえず「否」を投じるのがマナーだと思う(苦笑)。


他にも、買収防衛策の導入を提案している某ゲームメーカー。


「基本方針の策定および本プラン導入の背景」として、事業特性や基本方針、取り組み、といったものをツラツラと並べているのだが、ほとんどが事業報告からカットアンドペーストしたような中身にすぎず、

「なぜ、第三者に買収されることがリスクになりうるのか」

という問いに対する明確な答えをそこから読み取るのは難しい。


「防衛策」の内容としては、「独立委員会」の勧告を受けて取締役会が防衛策の発動・不発動を決議し、発動すると「大規模買付者等が行使できない「新株予約権」が無償で割り当てられる」という、至ってありきたりなものだけに、普通なら異を唱える必要はないのだろうが、この会社の場合、創業者一族系の財団等が発行済株式の25%を押さえている同族企業、という事情もある。


上記のような事情ゆえ、「買収防衛策」発動の可否を審議する場面で、果たして純然たる「企業価値」に思いを馳せた議論がなされるかどうか、疑義をさしはさむ余地は当然に出てくるだろう。にもかかわらず、「独立委員会」を構成しているのが現役の取締役と監査役(いずれも社外だが)とくれば、「否」を投じられても仕方ないのではないだろうか。


また、今年から「社外役員に関する事項」の記載の充実が図られており、各社とも「当事業年度における主な活動状況」として、社外取締役等の取締役会出席状況等を掲載しているのだが、某健康食品会社では、M&Aの世界でも知財業界でも有名な、某著名弁護士が、「全21回のうち16回」しか出席していないことが堂々と記載されている。


何にもなければ取締役会に出席して意見を言うくらいしか仕事のない社外取締役が5回も欠席してどうする((しかも職のステータスを考えれば、それなりの報酬は受け取っているはずだ)、というのが自分の率直な感想で、それゆえ、某弁護士を取締役に再任する議案に対しては、迷いなく「否」だろう・・・と思う。


他にも、環境系アクティビスト株主が毎年活躍することで有名な電力会社などでは、会社提案7に対し、株主提案が8つ。


後者の提案の1つは、新聞等でも報道されている、某ファンドによる配当引き上げ要求なのだが、いわゆる“アンチ原発”派(と思われる)人々が出している議案の中にも、

定款一部変更の件(1)
◆提案の内容
 第1章に以下の条を新設する。
(報酬の公表)
第6条 個々の取締役の定額報酬、賞与金等は、遅滞なく公表する。

定款一部変更の件(7)
◆提案の内容
 第12章 行動する株主
 第52条 経営上膨大なリスクを伴う事業内容および大きな方針転換に関しては、株主の社会的責任(コーポレート・ガバナンス)を果たすべく、株主総会、臨時株主総会もしくは適宜に株主集会を持つことにより、経営上の課題を判断するための情報を提供する。
 2 情報の提供は客観的であることを旨とし、そのため賛否もしくは中立の第三者的立場の有識者を喚問し、情報提供を得ることとする。

といった、“物言う株主”が喜びそうな提案が並んでいる。


提案の内容自体は正論だけに(わざわざ定款で書くことじゃない、という反論は当然ありうるにしても)、「取締役会の意見」の内容に注目して読んでみたのだが、脊髄反射的に「反対」と述べるだけで、理由付けはいかにも心もとない。


結果的には否決されてしまうのだろうが、「取締役の報酬開示」などは、株主以上にその会社の社員の方が気にしているところでもある(笑)。


ゆえに、時代を先取りして、株主提案を呑んでしまうくらうのおおらかさがあっても良いのではないか、などと願ってしまったりもするのだが、所詮ないものねだりに過ぎないのだろうか・・・*1

*1:実際、「取締役会の意見」の下書きを書いている平担当者なんぞは、「株主提案に賛成」と書きたい衝動に駆られながら、パソコンのキーボードを打つのが常なのだ。

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