プロ野球肖像権訴訟・第2ラウンド

昨年夏に第一審判決が出されているプロ野球選手肖像権訴訟。


コメントを載せようと思いつつ、延び延びのまま1年くらい経過してしまっているのは重大な反省事項。


それはさておき、控訴審に入って選手側陣営も戦略を変えてきたようで、今年3月の古田敦也・ヤクルト兼任監督に続き、再び選手が法廷に立ったそうである。

「ゲームソフトなどでの氏名や肖像の使用許諾権が球団にないことの確認を、プロ野球選手約30人が球団に求めた訴訟の控訴審が19日、知財高裁(中野哲弘裁判長)であり、ヤクルトの宮本慎也日本プロ野球選手会会長が「肖像権はもともと自分たちの権利で、選手会で管理するのが自然だ。現状では問題が多く、変わっていかなければならない。」と訴えた。(日経新聞2007年6月19日付朝刊・第22面)

選手会会長、という立場上やむを得ないこととはいえ、シーズンの真っ最中、しかもチームの調子もあまり良くない中で当事者尋問(のはず)を受けなければいけない宮本選手に対しては同情を禁じえない。


野球契約に基づく統一契約書の解釈が争点になっている「肖像権に基づく使用許諾権不存在確認請求事件」において、「変わっていかなければならない」といったところで、果たして選手側有利の結論を導けるのかは疑問も残るところ*1


宮本選手は、

「選手はみんな自分たちに権利があると考えているが、その思いが裁判所に届いていない。判決後、選手に陳述書などを出してもらい、裁判所に声が届くように動いている。」(同上)

と述べていたようだが、“契約の解釈論”という土俵の上で、その声がどこまで届くかも微妙なところではある。


もっとも、第一審判決が、高部コートにしては珍しく(笑)、実務慣行を意識した穏当な結論になっていただけに*2、高裁でのどんでん返しがないとはいえない*3


今年中には判決が出る可能性のあるこの事件。今後の展開と併せて注目されるところではある。


なお、第一審の当事者目録を見ると、

当事者目録
東京都港区<以下略>
原告 高橋由伸
東京都世田谷区<以下略>
原告 上原浩治
東京都港区<以下略>
原告 二岡智宏
東京都港区<以下略>
原告 阿部慎之助
東京都品川区<以下略>
原告 宮本慎也
千葉県市川市<以下略>
原告 度会博文
東京都港区<以下略>
原告 五十嵐亮太
東京都港区<以下略>
原告 古田敦也
神奈川県川崎市<以下略>
原告 鈴木尚典
横浜市<以下略>
原告 三浦大輔
東京都世田谷区<以下略>
原告 相川亮二
名古屋市<以下略>
原告 井端弘和
名古屋市<以下略>
原告 岩瀬仁紀
名古屋市<以下略>
原告 福留孝介
名古屋市<以下略>
原告 森野将彦
兵庫県芦屋市<以下略>
原告 今岡誠
神戸市<以下略>
原告 赤星憲広
兵庫県西宮市<以下略>
原告 福原忍
兵庫県西宮市<以下略>
原告 濱中治
広島市<以下略>
原告 黒田博樹
広島市<以下略>
原告 新井貴浩
広島市<以下略>
原告 小山田保裕
千葉県市川市<以下略>
原告 小笠原道大
東京都新宿区<以下略>
原告 金子誠
東京都港区<以下略>
原告 金村曉
札幌市<以下略>
原告 木元邦之
東京都港区<以下略>
原告 松坂大輔
埼玉県所沢市<以下略>
原告 星野智樹
東京都北区<以下略>
原告 小林雅英
千葉市<以下略>
原告 福浦和也
東京都江戸川区<以下略>
原告 渡辺俊介
神戸市<以下略>
原告 川越英隆
大阪市<以下略>
原告 阿部真宏
兵庫県尼崎市<以下略>
原告 高木康成

ということだが、控訴審段階で何人か入れ替わったのだろうか・・・?*4


少なくとも上のメンバーを見る限り、あまり長期化しすぎると、口頭弁論終結時に確認の利益が失われてしまう原告(控訴人)が続出してしまうのではないか・・・という懸念も抱かざるを得ないところで、この辺の戦略の立て方は難しいだろうなぁ、と感じた次第である。

*1:「変わっていかなければならない」ということは、言い換えれば現行の契約解釈としては、「球団に肖像権が帰属する」ということになっていることを自認したことになるのでは・・・という疑問が生じる。

*2:「選手の球団に対する氏名肖像利用権の独占的許諾」という構成をとることによって、球団側の使用許諾権限を認めた。

*3:氏名肖像利用権の人格権としての性質を強調して、選手側に有利な解釈を導くのか、それとも氏名肖像利用権を人格権から切り離された商業的利用権(いわゆる「パブリシティ権」)として構成することで、球団側に有利な解釈を導くのか(この点については、コナミの丹羽執行役員によるNBL掲載の一審判決評釈が参考になろう。丹羽繁夫「プロ野球選手のパブリシティ権をめぐる諸問題」NBL858号40頁(2007年)以下参照。)。いずれにも転びうる可能性は残されている。

*4:少なくとも松坂選手に関しては、確認の利益が失われているから、当事者変更か訴えの取下げか、いずれかが必要になってくるだろう。