「来春卒業予定の大学生の就職活動について日本経済新聞社とNTTレゾナントのgooリサーチが実施したネット調査によると、7月初旬までに5割強の人が入社企業を決めていることがわかった。卒業まで約9ヶ月残した時点で多くの学生が就職活動を終了、企業が人材を早めに確保する動きが例年以上に活発だったことを裏付けた。就職活動を終えた学生の4割強が東証・大証一部上場企業を選択、企業規模による採用力の格差が一段と開いている可能性が高い。」(日本経済新聞7月20日付朝刊・第11面)
いろいろと突っ込みどころがありそうな記事(笑)。
まず、「5割強」というのは、院進学予定者や留年志望者も入れた数字ではないか。でなければ、明らかに少ない(笑)。
一番の就職氷河期との比較なら、この数字でも「多い」という判断になるのかもしれないが、バブル崩壊後の自分の世代でも、7月の時点の内定者は、全体の7割くらいに達していたと思うし、夏休みにリクルートスーツ着て歩いてた学生なんて、ほとんどいなかった。
逆に、これだけ景気が良くてもまだ決まっていない学生が半数近くいる、ということの方が衝撃だ。
あと、「採用力格差」に関して言うと、採用募集の数でそもそも大手上場企業とそれ以外の企業とでは大きな「格差」があるのだから、全体の数字を見れば前者に内定した学生が多いのは当たり前の話なのであって、別に問題視するようなことでもあるまい。
ベンチャー企業にしても中小企業にしても、教育にコストがかかる新卒の採用には元々固執していないところが多いし、実際、そういうコンパクトな会社の良さは、窮屈な大企業で一度働いて見ないと分からないものだから、新卒がとりあえず大きい企業に入って、その後ベンチャーや中小企業に移っていく、という流れは自然で、かつ効率的な人的リソースの配分にもつながっていくものだと思う*1。
日経の記事は、暗に
“優秀な新卒社員、力が劣る中途採用”
という事実に反した前提を念頭に置いて書かれているような気がして*2、あまり気分の良いものではない。
ちなみに、一番気になったのは、「就職活動を終えた大学4年生の声」で紹介されている
「この人たちと一緒に働きたいと感じた」
「社員が学生と対等に接してくれた」
等々の声のように、「社員や職場の雰囲気」が、就職先の決定に際して、相変わらず重視されているように見えること。
もちろん仕事をする上での“雰囲気”は大事だ。
だが、学生に接する社員一人ひとりが醸しだす“雰囲気”と、会社という組織が醸す出す“雰囲気”は、全く違うものだと思ったほうが良い。
もっと具体的に言うと、
「社員の印象が悪い会社がロクな会社ではないのは確かだが、社員の印象が良くても会社全体の雰囲気が良いとは限らないし、むしろ社員の印象に反して雰囲気が悪い会社はいくらでもあるのだ」
ということになる。
まぁ、当の学生さん本人も、「給料良さそうだから」とか、「ステータスがありそうだから」とか、「コネがあったから」といった理由を前面に出すより、「雰囲気」とか「社員の人柄」を選択した理由に挙げたほうが、“自分がいい奴に見える”と思って、アンケートに答えている可能性は大なのだが(笑)。
筆者としては、純粋な人が騙されない就職活動システムになるよう、ただただ願うのみである。