自分が競馬を見始めた頃は、まだ、岡部幸雄騎手が関東で盤石の強さを誇っており、自身の最多勝記録を着々と更新していたから、こんな日が来るとは(頭では分かっていても)なかなか想像できなかった。
日経新聞の記事にもあるとおり、今、武豊騎手は、これまでにない“逆風”下にいる。
38歳という年齢に似合わない今年の失速を見ると、「早熟の天才」という見出しを付けたくなる気持ちも分からないではない。
だが、今年の戦績を見ても、JRAの現役騎手の中では相当上の世代に属する、彼の上にいるのは、地方で鳴らした岩田、安藤勝己の両騎手だけ、というのも事実なわけで、いつまでたっても台頭してこない若手との埋めがたいギャップを考えると、本人が自らムチを置くまで彼の時代は終わりそうもない、という現実も否定することはできないだろう。
武豊騎手がブレイクした時代は、まさに実体経済のバブルと、オグリフィーバーからナリタブライアン、マヤノトップガンの時代まで延々と続いていく競馬界のバブルが一緒になってやってきた時代。
「タケユタカ」の名前を聞くと、ファンとしても一番楽しかったあの時代が今でも身近なものとして思い出せる、そんな存在のジョッキーだけに、新しい世代の台頭に期待を寄せつつも、心のどこかで彼の時代が続くことを願う、そんな気分である・・・。