そんなに増やしてどうすんねん。

企業の知財業務への取り組み強化に関する取り組み二題。

その1

まずは新しい業務展開の取り組みについて。

日産自動車は自社で保有する特許など知的財産の外販に乗り出す。まず触媒や表面処理など五種類の技術を異業種企業にライセンス供与する準備を整えた。環境・安全技術の高度化に伴い自動車メーカーが手がける技術領域が素材、IT(情報技術)などに急速に広がっている。これを有効活用し知財の外販を新たな収益源と位置付ける。」(日本経済新聞2007年9月7日付朝刊・第11面)

「外販」という表現が適切かどうかはともかく、知的財産の積極活用、というコンセプト自体は悪くない。


対象特許が実際に使われていない(コスト面等から自動車製造そのものへの導入が困難)なものであれば、開放して収入を得る戦略をとる方が得策だし、仮に使われていたものだったとしても、「(よほどのブレイクスルー的技術でない限り)技術そのものよりも生産工程管理や販売管理の方で差が付く」という業種の特性上、開放することによるデメリットはさほど大きなものではないように思われる(この辺は電機メーカーとは決定的に異なると思う)。


なので、そんなにケチをつける話ではないのだが、「新たな収益源」と位置づける、というのは少々いいすぎか。
少なくともこの国の“大企業”といわれる会社で、特許収入を「収益源」とできるほどのライセンス戦略を確立した会社を筆者はいまだ知らない。

「同社は2004年4月、知的財産権の保護やライセンス事業の開始を目的に知的資産統括室を設立。これまでに外販可能な技術の調査や選択、営業活動の準備などを進めてきた。」

この話に限らず、業界としては非常に画期的と思えるような取り組み(たとえばブランド戦略など)を行っているにもかかわらず、業績には結びついていないように見えるこの会社。


保守的な組織に、新しいコンセプトが十分に根付いていないのか、それとも我々が短期的な視点で見すぎなのかはわからないが、個人的には“トヨタの一人勝ち”を称える前に、もっと注目してみてもよいのではないか、と思っている。

その2

こっちの方は、思わず表題のような突っ込みが入るニュース。

ソニーは国内外で自社の知的財産権を守り、特許侵害や模倣・模造品などの被害を抑えるため、知財管理の体制を強化する。本社の知的財産センターを毎年10-20人規模で増員するほか、グループ各社や各事業部の知財担当者との連携も強める。模造品被害や特許侵害を巡る訴訟が増えていることに対応、知財戦略を経営の根幹にかかわる要素と位置付け対応を進める」(同上)

驚くべきは、ソニーは現状でも本社の知財センターと海外拠点に約350人の要員を抱えており、さらに各事業部に特許担当要員が置かれているということ。


そこからさらに増やそうとする意図を筆者としては図りかねている。


さすがにどっかの会社みたいに、“法律のわかる知財担当は全社で一人しかいません(しかもその一人もどこまでわかってるのか怪しいw)”という状況だとさすがに少々ヤバイが、かといって、ある程度の人数を超えてしまえば、組織そのものをコントロールするために多大のコストを支払わなければならなくなるし*1、在籍する人間のモチベーションも落ちてくる。


また、人を増やせば、それに応じた仕事を作り出さないと組織の求心力を保てない、というのも、どこにでもある話で、それによって社内外に軋轢を起こす可能性も否定することはできない。


実際のところは、記事には出てこない仕掛けがあるのかもしれないし、仮にそのとおりの話だったとしても、他人様の会社を心配する義理はないのだが、“組織づくり”にかかわるものとして、いろいろと考えさせられる事例であるのは確かである・・・。

*1:どのくらいの人数が分岐点になるのかは分からないが、「ある人数を超えると、人を増やすことによる管理コストが、人員増によってもたらされるメリットを上回ることになる」という理は、筆者の経験則上、どんな組織にも当てはまるものだと思っている。