思いはたった一つだけ。

自分が会社の中で「法務」という仕事に拘っているのは、「困っている者を助ける」というところに、この仕事の本質があると思うからだ。


取引先との激しい修正の応酬を経て継ぎはぎだらけになった契約書を手に、真夜中にうなだれてやってくる営業マン。


新しい事業スキームの問題点を網羅せよ、と闇夜にボートで漕ぎ出すような難題を突きつけられて途方に暮れている企画屋さん。


そして、まさに燃え上がらんとしている、顧客やクレーマーとの間の紛争の火種を抱えて、青ざめている人々。


法という道具を使って、絡まった糸を揉み解し、他のスペシャリスティックな観点からのコメントと摺り合わせながら、目の前にある最適解を導いていく。


単に知恵をめぐらすだけでは見えてこない、かといって、純粋なヒューマニズムだけでは、真の解決を導くにはあまりに物足りなさすぎる。


安易に妥協することなく、真のプロフェッショナルとしての仕事を貫こうとすればするほど、様々な障害が目の前に飛び出してくることになるが、それでも、一つひとつ山を潰していって、「あとは気合ひとつで何とか」というレベルまで持ってこられれば上出来だ。


厄介ごとを片付けて、仕事の本来の面白みを取り戻すことによって、苦しんでいた人々の心にほんの少しでも希望の灯がともるのなら、もう他に言うことはない。



・・・もちろん、いつもそんなふうにうまく行くはずもないのだけれど、それでも、上記のような理想に少しでも近づけるように仕事を重ねていくのが、法務担当者のあるべき姿だと思うし、「法律」というのはそのためのツールに他ならないと思っている。


そして、会社の中の「法務」という枠を飛び出しても、その理には何ら変わるところはないと自分は思う。



守るべきものが会社なのか、自分の仕事なのか、はたまた平凡な家庭なのか、ささやかな名誉や財産なのかは分からないけれど、こと在野の法曹に関して言えば、「困っている者を助ける」というところに、仕事の一番のキモがあるはずで、それは救うべき相手が、“弱者”だろうが“強者”だろうが、何ら変わるところはないはずだ。



空虚な言葉や、政治的権力やカネやステータスだけでは救えないものがたくさんあることに気付いたからこそ、自分はこの仕事に賭けている。


そして、望むと望まざると、いつか誰かに自分のキャリアの幕を引かれてしまう勤め人の限界を乗り越えたいと思うからこそ、更にその先を目指す・・・。




・・・であれば、だ。


他人の成功を羨む前に、自分にできることを一つひとつ積み重ねていこう。


時の運の勝負の結果に一喜一憂する前に、今目の前に与えられているミッションを片付けていこう・・・。



一晩考えるまでもなく、導き出した結論。


一年、いや半年先に、自分がどこにいようと、この思いだけは変わらない、と信じている。

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