還ってきたクリスタル・ボイス(ネタバレあり)

タニムラさんの話をしよう。


もちろん、「昴」を歌う人のことではなく、かつて“ガールポップ最後の砦”といわれた40代女性アーティストの方である。


去年のクリスマスコンサートの後、「次に生声を聞けるのがいつになるか・・・」という感傷的なセリフをこの場で吐いたのは筆者自身の記憶にも新しいのだが*1、その舌の根も乾かぬうちに、2年連続で懲りずに行ってしまった。

谷村有美と過ごすハートフルなクリスマスVol.5」

今年は「デビュー20周年スペシャル企画」なんて冠もついている。


会場はめぐろパーシモンホールだったのだが、ファンの年齢層の高さも*2、歳を感じさせないタニムラさんのテンションの高さも*3全く去年と変わらない。


だが、ただひとつ去年と違った(ように感じられた)のは、ヴォーカルの力強さと乱れなきハートフル・ボイス。


去年も同じように絶賛してはいたものの、正直、最初の何曲かは、音程(特に高音域)が乱れていたし、中盤以降に入るまでは落ち着かない雰囲気だった。


それが、今年は、初っ端の「朝嘘」から絶好調、といった感じで。


20周年の関係で、久々に本格的なツアーをやったせいなのか、それとも1曲歌い終わってからいきなりお得意の「MC」のコーナー(それもリクエスト読み)に入ったせいなのかは分からないが、他のアーティストも含めて、自分がこれまで見た中では優に3本の指に入るような完璧なライブ、だったんじゃないかと思う*4


MCもノリノリで、終盤にかけては、ダンナ(原田泳幸日本マクドナルドCEO)のネタは出るは*5、元事務所への痛烈な皮肉も出るは、で、笑いあり、そして涙あり・・・。


正直、最近の音楽からは消えてしまっていた“徹底的な癒し感”が、ここにまだ生きていたのか、と、素直に感動を覚えた一夜であった。



90年代中盤から吹き荒れたB-ing調ロックや、小室系ダンスミュージックに押されて絶滅しかけていた“癒し系音楽”。


元々、バブル絶頂期から先の見えない下り坂に差し掛かる中で、疲弊した人々の癒しのために機能していたような曲も多かっただけに、時代背景が変わると共に、メジャーな世界からほぼ淘汰されてしまった(女性アーティストでいえば、岡村孝子渡辺美里辛島美登里平松愛理永井真理子・・・。男性でいっても、シングライクトーキング槇原敬之などなど。ピアノで弾くのがしっくりくるようなアーティストは、一度はみんな消えている)のも決して不思議ではなかったのだが*6、昨年渡辺美里が紅白出場、今年の紅白には槇原敬之とあみん(岡村孝子)が復活*7、そして辛島美登里がメジャーレーベル復帰、等々、繰り返す歴史は着実に追い風になっているように見える。



それゆえ、この日のコンサートで飛び出した、「来年は紅白〜!?」のくだりも決して大風呂敷とはいえないんじゃないか、と思ったりしている。



なお、間もなく、↓なものも出るらしいが、自分はとりあえず見送りの一手(今のところは)。


Crystal Time~谷村有美 コンプリート・レコーディングス Sony Music Years BOX~(DVD付)

Crystal Time~谷村有美 コンプリート・レコーディングス Sony Music Years BOX~(DVD付)


この種の“ソニー商法”が嫌い、というのもあるが、それ以上に、この日のタニムラさんの意欲的なステージを見る限り、この先の活動にもっと期待できるような気がして・・・。


クリスタル・ボイスを、記念品のボックスの中に閉じ込めるのはまだ早い。


・・・なんて言ってみたくなる。




なお、ネタバレになるが、以下記念にセットリスト(8日(土)分)を。









1.朝は朝 嘘は嘘     
2.バースデーソング(リクエストに応えて)
3.ひとつぶの涙
4.今が好き
5.はじめの一歩
6.予感-I'm Ready to Love- (デビュー時の思い出交え)
7.一緒に暮らそう (エピソード付き)
8.午前0時のオアシス(リクエストに応えて)
9.恋に落ちた (エピソード付き)
10.A・RA・WA 
11.いちばん大好きだった
12.好きこそものの上手なれ(JAZZアレンジ)
(バンドメンバーによるパフォーマンス)
13.Instrumental Part I 
14. 雪の扉 
15.名前のないうた
(アンコール)
16.クリスマスソング
17.あなたに出逢えて
18.FEEL ME
19.Tonight
20.Not for Sale(アカペラ)


個人的には、アンコールに「FEEL ME」入れて場内総立ちにさせたところで、Tonightで締める、ってあたりが最高に憎い演出だと思った次第。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20061218/1166548525#tb。もっとも、去年の今頃は、次の春からしばらく東京を離れることになるだろう、というほぼ確定した予定もあったので、状況が変わった今となっては・・・というのはただの言い訳。

*2:去年は平日でスーツ姿が多かったのであまり気にならなかったのだが、休日に私服になると、あぁみんな歳相応だなぁ・・・と思う(苦笑)。

*3:何たって真っ赤なフリフリドレスですから(笑)。

*4:さすがにアンコールに入ってからは息切れ気味だったように見えたが、その辺はご愛嬌だろうし、ファンも分かっているw。

*5:「サラダ食べてくださ〜い」には会場大ウケ。

*6:本当の意味でどん底の時代になって、癒しよりも“ええじゃないか”的な開き直り思想(&それを体現した曲調)が求められるようになってしまったのだろう、と勝手に解釈している。

*7:筆者とて別に「紅白歌合戦」が好きなわけではないのだが、昨年の出場を契機とした秋川某の大ブレイクを見るまでもなく、一つのターニングポイントとして世の中一般に認知されうる機会になるのは否定できない事実だと思う。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html