今年もやってきた日本経済新聞社のアンケート調査結果発表*1。
いきなり1面で
「買収防衛策の発動 弁護士と企業 意識に差」
なんてセンセーショナルな見出しが出ているのだが*2、当の弁護士にしてみれば、取締役会マターとして処理されるより、株主総会マターにしてもらったほうが当然実入りは多くなるわけで*3、立場が変われば考え方が異なるのも当たり前だろう、と、とりあえずスルーしておくことにする(苦笑)。
で、細かい数字は飛ばして、さっそく今年のランキングを見てみよう*4。
昨年までは「弁護士が選ぶランキング」と「企業が選ぶランキング」が別々に記載されていたのだが、前者が“組織票批判”を浴びたことを意識したのか、今年は統合したランキングが発表されている(ただし、企業・弁護士それぞれの内訳は開示されている)。
2007年に活躍した弁護士ランキング
<企業法務部門>
1.岩倉正和氏 西村あさひ
2.石綿学氏 森・濱田松本
3.葉玉匡美氏 TMI総合
4.藤縄憲一氏 長島・大野・常松
5.中村直人氏 中村・角田・松本
6.郷原信郎氏 郷原・米津
7.中川秀宣氏 TMI総合
8.武井一浩氏 西村あさひ
9.久保利英明氏 日比谷パーク
10.池永朝昭氏 アンダーソン・毛利・友常
弁護士票だけで見ると、三大事務所が仲良く上位を独占していたのだが(岩倉、石綿、藤縄の三弁護士)、企業票の威力で、アルファブロガー・葉玉弁護士が見事にその一角を崩した*5。
全体的に見ても、同業者票の順位(上位は三大+TMI)と、企業票の順位が大きく食い違っている傾向は相変わらず*6。
もっとも、いくら「2007年に活躍した」ランキングとはいえ、弁護士登録してから間もない先生が上位に来るっていうのはねぇ・・・。
この結果を見る限りは、身内の組織票も問題だが、ミーハーな企業側の一票にも、同じくらい問題があるような気がしてならない*7。
更に興味深いのは、「知財部門」の数字。
2007年に活躍した弁護士ランキング
<知財部門>
1.松田政行氏 森・濱田松本
2.升永英俊氏 東京永和
3.飯塚卓也氏 森・濱田松本
4.片山英二氏 阿部・井窪・片山
5.城山康文氏 アンダーソン・毛利・友常
6.末吉 亙氏 末吉綜合
7.牧野利秋氏 ユアサハラ
8.升本喜郎氏 TMI総合
9.遠山友寛氏 TMI総合
10.福島栄一氏 西村あさひ
弁護士票が松田弁護士、城山弁護士、飯塚弁護士と続くのに対し、企業票は升永弁護士、牧野弁護士(!)とな・・・。
確かに高名な先生方ではあるが、実際に仕事をお願いした人が投票しているとは思えない(苦笑)。
まぁ結局、この種のランキングは、ブログネタとして取り上げるには最適でも、実際に仕事をお願いする先生を探す上での指標にはなりえないだろう、と思う。
ミーハーな部長クラスのチョイスならまだしも、日々前線で訴訟対応に追われる担当者ならば、人気者になってスケジュールが押さえられない先生よりも、地味でもしっかりと仕事をしてくださる先生を選ぶのが当然の選択だから。
そう考えると、こういうランキングで上位に入るのは、当の先生方にとっても決して歓迎された話ではないのかもしれない。
いつまでこの企画が続くのかは分からないが、筆者としては、このランキングが新たな悲劇を生まないことを、タダタダ祈るのみである(笑)。
*1:2007年12月19日付朝刊第33面。
*2:記事によると、「買収防衛策発動に際して株主総会の決議が必要」と回答した弁護士が35.3%だったのに対し、企業側では僅か11%に止まった、ということである。
*3:想定問答だのリハーサル立会いだので、チャージは増えるから(笑)。
*4:昨年のランキングは、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20061226/1167156707#tb。一昨年のランキングは、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20051223/1135306868#tbをそれぞれ参照。
*5:もっともTMIは、中川秀宣弁護士が企業票0で7位に食い込むなど、三大事務所に負けず劣らずの集票力を見せているが。
*7:といいつつ、筆者自身も実際のところはミーハーなので、もしこのジャンルで一人選べるとしたら、郷原信郎弁護士あたりに一票入れてしまうのかもしれないが(笑)。