ここ数年、採点や大会後の国際大会派遣選手選考で物議を醸してきた全日本フィギュアだが、今年は誰が見ても文句なし、の順当な結果に納まった。
男子の場合、織田信成選手の欠場という、あまり嬉しくない事情があったにしても、高橋大輔選手が「4回転2度成功」をやってのけての圧勝*1。
女子は我が国が誇る2枚看板、浅田真央、安藤美姫の両選手が、SP、フリーと1位を分け合い、二人とも200点超えのハイスコアで上位独占。
一昨年は選考過程で、昨年は採点で*2、と、全日本では何かとネット雀の話題になる安藤選手も、グランプリシリーズの不調なんてどこ吹く風、の集中力で、今回はほぼパーフェクトな演技だったから、文句のつけようがない*3。
注目の「3人目の枠」にしても、今季絶好調の中野友加里選手が世界の舞台に立てないことのデメリットを考えると、村主章枝選手が涙を呑んだのもやむを得なかった、といわざるを得まい。
仮に村主選手がSPの順位を守りきった場合、選手選考が荒れる可能性もあったのだが、ここは中野選手がフリーをほぼノーミス(最初のトリプルアクセルの着氷こそ乱れたものの、後の滑りはパーフェクトに近かった)で終え、一気に順位を逆転したことによって、協会にしてみればほぼ理想的な展開となった。
来年の世界選手権、今季のキム・ヨナに立ち向かうのは、3人が束になっても難しいかもしれないが、日本勢としては是非3人が最終グループで揃い踏みして(理想としては滑走順でキム・ヨナを挟み撃ちするようなイメージか(笑)、見せ場を作ってほしいものである。
なお、全日本フィギュアのもう一つの目玉、とされていた“さらなる世代交代”だが、最終組で滑った水津選手がフリーで2度の転倒を含む絶不調で11位に後退、武田奈也選手はSPで出遅れて追い上げ届かず、フジテレビがやけに力を入れていた14歳の西野選手も緊張からか平凡な出来、とこれまた穏当なところに収まった。
26歳の村主章枝選手が、「それでも4位」に踏みとどまったこと(フリーの技術点などは浅田舞選手をも下回る厳しい出来だったものの、演技点は相変わらず高く、若手の追い上げをかわすには十分なレベルだったと思われる)、のみならず、22歳の鈴木明子選手(SP5位、FS5位で5位入賞)、21歳の太田由希奈選手(SP7位、FS8位で計7位)と、何らかの事情でリンクを離れていた選手達に復活の兆しが見られたのが大きい。
後戻りすることのできない時計の針が、更なる世代交代の時を告げるのは時間の問題かもしれないが、リンク上に残された優雅さを次代に継承するためには、やはり今、彼女たちが結果を残す必要がある。
その意味で、今大会の結果が残したものは大きかったのではないだろうか。