象さんの〜

すきゃんてぃは ちっちゃいけれど〜 ♪


という曲が子供の頃流行っていて*1、当時は「すきゃんてぃ」って何だ?と素朴な疑問を抱いたものだが、そんな謎を解き明かすような(笑)判決が一つ。

知財高判平成19年12月26日(H19(行ケ)第10217号)*2

本件は、エスビーエイチ・インティメッツ・インクを請求人とする不使用取消審判(取消2006-31192号)が認められたのを受け、「スキャンティー」(商標第575122号、昭和36年6月20日登録)の商標権者が提起した、審決取消訴訟である。


原審決において、原告側は商品タグに

「1955年、スキャンティとその家族は生まれました」

という記載があったことを使用の証拠として提出したが、

「一種のキャッチフレーズとして捉えられるというのが相当であるから、この中の「スキャンティ」の表示をもって、自他商品の識別機能を果たし得る態様の使用とは認め難いものである」(3頁)

と退けられていた。


そこで、本件訴訟においても「商標の使用」の有無が争われたのであるが、知財高裁は以下のように述べて、原告側の請求を退けている。

「原告が代表取締役として運営する訴外会社は、同社の制作するパンティのうち記事が薄くてタイトなパンティを「スキャンティ」と称し、これに「1955年、スキャンティとその家族は生まれました」、「TUNIC 訴外会社」、「ヒップ85-93 COL.A QUA. スキャンティ ポリエステル100%」などと表示されたタグを付して販売していたことが、認められないではないが、その販売を、本件予告登録日前の平成15年12月12日から平成18年10月11日までの間に行ったことを認めるに足りる証拠はない。」(5-6頁)

「上記認定の事実によれば、故鴨居(注:鴨居羊子氏)は、記事が薄くてタイトなパンティを創作し、これを「スキャンティ」と名付けて発表したところ、この新しいパンティが注目を集めて広く知られるようになった結果、本件予告登録日である平成18年10月12日までには、「スキャンティ」の語は、女性用のパンティのうち生地が薄くてタイトなものを意味する一般的名称となっていたものと認められる」(8頁)


年末か新年早々か忘れたが、つい最近も、沢村一樹がナビゲーターを務める深夜番組で、西川女医が「勝負下着」の歴史を紹介するくだりがあって、その中で「スキャンティ」も登場していたのだが、やはりそこでも、「普通名称」としての使われ方しかしていなかったように思う。


本件に関して言えば、裁判所は、取り消し対象商標が自他識別標識として用いられていない、という原審決の認定判断の是非について論じれば足りたはずなので、「一般的名称となっていた」というところまでいう必要はなかったようにも思えるが*3、結論としては妥当であろう*4


「上記認定の事実」として挙げられているものの中に、故・鴨居羊子氏の「下着ぶんか論」「わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい」といった、原告側が証拠として提出したと思われる著作の記述も引用されているのは何とも皮肉であるが、昭和60年代には既に曲のタイトルにもなってしまっていたわけで*5、商標権者側としても如何ともしがたかった事案なのかもしれない。

*1:うしろゆびさされ組「象さんのすきゃんてぃ」詞・秋元康

*2:第1部・塚原朋一裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080108151055.pdf

*3:ここまで言い切った判決は筆者自身はあまり見かけたことはない。

*4:大辞林第2版に「スキャンティ」が「きわめて短いパンティ」と説明されていることも認定されている。

*5:この当時の商標権者は、まさしく鴨居羊子氏本人。平成3年3月の鴨居氏死去に伴い、商標権が原告に遺贈されたことが認定されている。

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