中山信弘先生最終講義

日経BP社の「ITPro」サイトより。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080122/291767/


いかに業界で知らぬ者のない高名な先生とはいえ、それが「ニュース」として取り上げられるのは極めて異例なことで、それだけ今の知的財産法の世界における中山教授の存在感が大きい、ということだと思う*1


紹介されている講義概要を見ると、その中で、

「独占理念と共有理念」
「権利者の利益と社会全体の利益」
「先進国と途上国」
「実務と研究」

という様々な二極対立の構図が取り上げられているのが分かるが、このような“対立の構図”の一方に組するのではなく、これらをいかに調和させ、併存させ、全ての者に恩恵を享受せしめる最適解を導くか、ということに、中山先生がいかに労力を割かれていたかは、これまでの各種審議会の議事録でのご発言や、つい最近出たばかりの『著作権法』の節々に出てくる言い回しに触れれば、容易に理解できることだろう。


各種ブログでの感想等を見ても、決して長くはない“最終講義”の中で、そのような中山先生の思いは十分に聴衆に伝わったのではないだろうか。


少なくとも、実務の現場にいる限り、時にはエゴイスティックに「権利者」としての利益を追求しなければならないときもあるし、逆に、「ユーザー」としての立場で権利者と真正面から対決しなければならないときもある。


だが、どちらか一方の側のエゴイズムだけでは、知的財産法が目指す法の理念を達成することが叶わないだろうことも又明らかなわけで、そんな時に、(ほんの少しでも)中山先生の崇高なる理念に立ち戻れて初めて、本当の意味での、“実務家”に値する存在に近づけるのではないかと思っている。


師のお言葉を借りるなら、

「賞味されるレベルにすら辿り付けない永遠の未完成人材」(若干翻案)

に過ぎない筆者が、「最終講義」を論評するなどもってのほか、だということは重々承知はしているのであるが、一知財実務屋の端くれとして、師の理念が少しでも世に広まればと思い、紹介させていただいた次第である。

*1:退官に伴う「最終講義」とはいえ、「存在感が大きい」という言葉は、決して過去形ではないし、10年や20年で過去形になってはいけない。師の唱えられてきた理論にはそれくらいの深み、重みがあると思っている。

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