たぶん好意的な評価が多いのだとは思うが、個人的にはいろいろと複雑な思いもある。
「東京大学の国際競争力を高めるため、トヨタ自動車、三菱東京UFJ銀行、東京電力など15社が120億円を拠出し基金をつくることが23日、明らかになった。毎年の運用益の一部を東大に寄付、東大は留学生向け奨学金の充実などに活用する。」
(日本経済新聞2007年2月23日付夕刊・第1面)
報道によると、「東京大学信託基金」の名称の下、5億〜15億の基金を拠出した会社は、
旭化成、旭硝子、キヤノン、新日本石油、住友化学、第一生命保険、東京電力、トヨタ自動車、富士フィルムホールディングス、松下電器産業、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱化学、三菱重工業、三菱東京UFJ銀行
だそうである。
大学側が運用リスクを負うことなく、資金拠出企業のリスクの下で寄付を受け取り続けることができる、というこのスキーム、相手が「東大」でなければそんなに易々と乗って来る会社はなかったはずで*1、なんとも恐るべしブランドの力、といったところだろうか。
筆者自身は、かの時代に生まれていたら、少なくとも「巨人」と「大鵬」は確実に大嫌いになっていたと思われるような人間だけに*2、こういうヒエラルキーの固定化、一極集中現象の加速につながるような試みに対してはシニカルなコメントしか出てこないのだが、ここ数年届くようになった「寄付金のお願い」を即シュレッダー送りにしていることへの罪悪感もあるので、ここは穏当な一言に留めておく。
「期待運用利回り年3.5%」ですか。ファンドマネージャー様のお手並み拝見といったところですね(棒読み)。*3
個人的には、「所詮東大以外は・・・」といった多くの大学関係者(教員、学生、スタッフ問わず)の意識の中に、日本の教育機関の競争力をそぐ何かがあるのではないか、と思っていて、東京一極集中のヒエラルキーに挑んでいくようなチャレンジャーが登場し、国内で激しい競争が展開されるようになって初めて、他国と渡り合えるような強力な「最高学府」が登場するのではないかと思っている*4。
資金力では決して負けない大学なら「カネ」で、懐が苦しい大学なら「知恵」で。
長年頂点に君臨するかの大学ですら、「内情は・・・」ということを考えれば、関係者の気持ちの持ち方一つで、どうにかなってしまうところもあるのではないか、と思うのであるが・・・。