判例は固まりつつあるが・・・。

チャップリン映画の格安DVD販売をめぐる訴訟で、知財高裁でも地裁の判断を支持する判決が出されている。

チャップリン映画の著作権保有する外国法人が「独裁者」など9作品の格安DVD販売の差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、知的財産高裁(宍戸充裁判長)は28日、著作権侵害を認め、販売差し止めと約1000万円の損害賠償を命じた一審判決を支持、東京のDVD製造会社二社の控訴を棄却した」
日本経済新聞2008年2月29日付朝刊・第42面)

詳細については、判決文がアップされてから確認することにしたいが、

「著作者であるチャップリンが死亡した77年から38年間となる2015年まで保護期間は存続する」

と、旧著作権法下における「著作者」の解釈を巧く使って、映画の公表時点から起算するのではなく、著作者個人の死亡時から起算することによって、長期の保護期間を確保する、という論理構成には変わりはなさそうである*1


昨年、このチャップリンから黒澤明映画へ続く一連の地裁判決を通じて(「シェーン」については著作権保護期間が満了したことが最高裁で認められたにもかかわらず)、旧法下著作物の保護期間が「実はとても長かった」という驚愕の解釈が示されたのであるが、これだけ短期間の審理であっさりと結論を出したところを見ると、知的財産高裁においてもこの解釈がひっくりかえることはなさそうである。


固まりつつある解釈。いつまでも続く著作権


つい先日の黒澤映画(松竹)判決の際にもコメントしたとおり、従来の立法者意思等とは異なるこのような“新”解釈が頻繁に利用されることで、新たに問題が生じることも考えられなくはないのだが、勝利の美酒に酔う権利者サイドに、そんな声は今は届かないのかもしれない・・・。

*1:地裁判決に関するエントリー「著作権狂時代」(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20070914/1189784014#tb)などもご参照のこと。

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