M&Aの落とし穴

昔、別冊商事法務か何かに載っていた、企業再編がらみの公告の分析をやったことがあって、その際の株式交換比率だとかTOB価格の算定のやり方って本当に妥当なのか?と疑問を持ったことがあったのだが、とうとうこんな判決まで出てしまった。

「旧カネボウの一部株主が「会社が提示した株式買い取り価格は不当に低い」として価格決定を求めていた裁判で、東京地裁難波孝一裁判長)は14日、買い取り価格は一株360円が妥当とする決定を下した。会社が提示した金額の2.2倍に当たる。産業界でM&A(合併・買収)が広がる中、株価算定の透明性が問い直されることになりそうだ。」(日本経済新聞2008年3月15日付朝刊・第13面)

正直、上場廃止後の株式の価値なんてあってなきが如くだから、少々安く召し上げられても文句は言えないところだが、本件ではファンド連合で構成される経営陣がTOB価格を決定した、という過程の不透明さが、思い切った判決につながったものと思われる。


投資銀行業務にかかわっている人間達から漏れ伝わってくるおぞましい本音を聞くまでもなく、

「少数株主?ゴミみたいなもの。小銭渡して黙らせとけばいい。」

と考えるのが合理性を重んじる経済人のあるべき姿(苦笑)だとということは筆者も重々承知しているつもりだが、それでも、「小銭」をケチるとこうなる、っていうことは良く肝に銘じておいたほうが良いのではないかと思う。


それにしても・・・・


記事にもあるとおり、鑑定費用約5000万円はいかにも高い。


市場価格を持たない株式の価値算定に少々手間がかかるのは理解できるとしても、これが個人株主負担になる、ということになれば、宝くじにでも当たらない限り、一般投資家は泣き寝入りせざるを得ないだろう。


華やかな会社法法務の世界で、とかく霞みがちな少数株主(&労働者など)の存在に目を向ける必要性を改めて感じさせられる事案である。

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