街を歩いていたら、今日も、リクルートスーツ姿の学生と思しき人々とすれ違う。
外資系やマスコミなど、動きの早いところはとっくの昔に内々定が出ていても不思議ではないし、一般の大手企業でも金融機関なんかはリクルーター面談が大詰めの時期にさしかかっているのではないかと思う*1。
なので、今頃こんなエントリーを載せても、「何を今さら」と思う人も多いのかもしれないが、まだ行き先が分からずに路頭に迷っている人も決して少なくない数はいると思うので、参考までにアップしておくことにする。
※ちなみに、このエントリーは、筆者自身のかなり昔の就活体験と、それ以降のリクルーターだの面接官だのの経験を元にしたものではあるが、どこまで汎用性がある話なのかは保証の限りではないので、用法には十分注意されたし(他業種の人間から聞いた話なんかも織り交ぜてはいるが、所詮百聞は・・・の世界なので)。
その1)OB訪問は時間の無駄である。
先日もOB訪問受けたばかりの人間が、いきなり毒を吐いてどうする・・・という感じなのだが、そんなに的外れな意見でもないと思う。
多くの学生にとってのOB訪問の目的は何だろうか。
模範解答は、「その会社で働いている人の話を聞いて、仕事に対するイメージを掴みたい」ということになるだろうが、実際には「あわよくばさっさと内々定を取り付けるための近道にしたい」という思いを抱いてOB名簿をめくる人も少なからずいるはずだ。
一昔前(といってもインターネットが普及していなかったような大昔)は、企業が公開している情報なんて紙媒体の限られたものしかなかったし、「説明会」なんていうイベントも形式的なものでしかなかったから、各企業の「リクルーター」という名の「OB・OG」が、文字通り、就職を希望する学生に開かれた「唯一の窓」で、上のような目論見でOBに接触するのがまさに賢い選択だったし、それゆえ「積極的なOB訪問」が慫慂されることも多かった。
だが、時代は変わった。
かつてのように「OB・OG訪問一本勝負」のような会社はかなり減っていて、今の主流はウェブエントリー&説明会からのトーナメント戦、である。
そんな時代にいくらOB訪問をしたところで、採用に直結するものではない。
ならば、もう一つの目的、すなわち「仕事(会社)に対するイメージ」云々の方はどうか。
学生から見て年の近いOB・OG(卒後2〜3年以内)であれば、「フランクにいろんな話が聞けていい」のかもしれないが、残念ながらよほどの小規模ベンチャー企業でもない限り、それくらいの年次の人間で、会社の中身全てを把握している者はいない。
会社に入って最初の何年かの人間がのたまうセリフなんて、後輩の前でなければ、上司のグチか仕事のグチかどっちかなのであって、いくら背伸びしたところで提供できる情報などたかが知れているのだ。
実際のところ、本当に会社の核心に触れる話をしたければ、最低10年近くはその会社の仕事を経験している人間を捕まえなければダメだろう。
だが、それくらいの世代になってくると、学生の前で話していいことと良くないことの分別は、もうちゃんと付いている。
会社の指示で派遣されてくるリクルーターはもちろん、採用スタッフとは別ルートのところにいる人間でも、よほど親しい人間でない限りは、本当に核心に触れるような話は避けて通ることになる。
・・・となれば、結局、貴重な時間を割いてOBに会いに行ったところで、実り薄いまま終わってしまうことになる*2。
実際のところOBに会いに行って聞ける程度の話は、工夫すれば公式の説明会や面接の合間にも聞けるし、某巨大掲示板に転がっている情報の方が真実に近かったりもするもので、筆者がOB訪問を薦めない理由も、その辺りにあったりするのである。
その2)就職人気ランキングは役には立たぬがネタにはなる。
毎年この時期になると、「就職人気ランキング」なるものが、あちこちの新聞・雑誌誌上を賑わすものだが、あれほどいい加減なものもないだろう、と自分は思っている。
巷の噂だと、某業界最大手の発表するランキングは、採用担当者がその会社のセミナーを受講すればするほどポイントが加算される仕組みになっているそうだし(苦笑)、新聞社系の発表するランキングだって、母集団が母集団だけに、誰にでも参考になる情報だとはとても言えない。
なので、自分の志望している会社が、就職人気ランキングの上位に入ってようがいまいが、信じた道を進む方が良いに決まっているのだが、「この時期になってもまだ行きたいところが決まっていない」人や、大学院進学だの国家試験だのが本命で、「“たたき台”として民間企業の面接を受けてみたい」という人であれば、“一つのネタ”として、ランキングを活用してみるのも良いかもしれない。
実のところ、筆者自身、人気ランキング上位企業に順番にハガキを出していったクチで、全く業種の違う様々な会社を受けて、毎日違う業界で「いかにこの業界の志望度が強いか」というアピールをする、という経験をしたことが、今の仕事に必須の演技力(笑)を身につける上で、非常に良い経験になったのは事実である。
あと、こういうランキングは、採用スタッフの側の方がむしろ意識していたりもするから、本当に狙っている企業の面接などで、就職人気ランキング上位企業の名前を出して、「実はこちらもいいとこまで行っているんですが・・・・やっぱり御社が内定くれるならそのほうがいいです(ハート)」なんて囁いたりすると、内々定をもらえる時期が多少早まる可能性もある*3。
就活の時期に流れてくる情報を本気で信じる必要はない。ただ小ネタとして使いこなすくらいの余裕は欲しい。
その3)残りものには福がある。
この時期、良く質問を受けるのが、「採用活動に応募するのは早いほうが良いのでしょうか」というもの。
最近では、一回で採用を終わらせずに、何段階かに分けて採用する会社も多いから、その辺の戦略で頭を悩ませている人も多いのだろう。
で、答えなのだが、一般論を言えば、やっぱり早いにこしたことはないだろう。採用担当者にとって一番の恐怖は、「予定していた採用人数の枠を埋め切れない」事態であり、そんなことになれば上司から大目玉を食らうのは分かっているから、少しでも早く、優秀な人間の“身柄を拘束したい”と思うのが当然のこと。
そうなれば、やはりどんな会社でも、一回目の採用から積極的に受からせていくことになるから、早めにチャレンジして自分の枠を確保するにこしたことはない・・・
もっとも、これは、「最初の採用タイミングで内々定をもらった人間が誰も辞退しなかった」場合の話である。
実際には、内定をもらっても3割くらいは平気で抜けていくし、元々残していた枠とあわせると、2回目、3回目のタイミングでも相当の数の枠は残っていることが多い。
企業側にとっての悩ましさは、「1度落とした人間に敗者復活の機会を与えることは事実上できない」ところにある。
個人情報保護がやかましい現代においては、最終面接にたどり着く前に掬い上げられなかった学生のエントリーシートを一晩以上寝かせておく暇はない(直ちにシュレッダー行きだ)。たとえどんなに「ここで落とすには惜しい学生」であっても、である*4。
そうなると、必然的に次の採用タイミングにあらためてエントリーをお願いする、ほかないのだが、本当に惜しまれるような優秀な学生であれば、わざわざそんな手間をかけて、自分を落とした会社をもう一度受けよう、なんてことは考えまい。
その結果、2度目、3度目の採用タイミングでは、1度目とはガラッと変わったメンバーでトーナメント戦が行われることになる。
率直に言えば、この2度目、3度目のトーナメントのレベルは、明らかに1度目のそれに比べて低い。
極端な話、4月ごろの面接なら、1次の集団面接で消えていても不思議ではないくらいのレベルの学生が、3次面接になってもまだ高評価で生き残っていたりする、それくらいのギャップはある。
会社にとっては頭の痛いところだが、学生にとってはむしろチャンス。
3月、4月に行きたい業界を適当に回って、余裕を持って5月、6月戦線に臨むもよし。
純粋に出遅れただけでも、希望を棄てる必要はない。
人生、残り物には福がある。
就活も例外ではない。
・・・さて、夜も遅いので、残りは「後編」ということで。
いつになるかは分からないが、とりあえず気長にお待ち願いたい。